調べたくなる言葉
◆パブロ・ピカソ
1881年スペイン・マラガ生まれの芸術家でキュビズムの創始者。
多作で知られ、生涯で約13,500点の油絵と素描など多くの作品を残した。
代表作は、ナチスのスペイン空爆を非難する「ゲルニカ」など。
作中では、春の誕生日1973年4月8日が彼の命日だった。
◆ガンジー
マハトマ・ガンジーは1869年インド・グジャラート生まれの政治指導者で
「インド独立の父」と呼ばれる。イギリスからの独立運動において、
「非暴力・不服従」のスローガンを掲げたことで知られる。
作中では、春が敬愛する人物として紹介。
◆ハルシオン、ロヒプノール
どちらも睡眠導入剤の商品名。
「ハルシオン」は、1977年アメリカの製薬会社、アップジョンが発売。
翌日への持越しが無く、広く処方されたが、使用量減少による
離脱症状があることが分かり様々な国で承認取り消しや使用禁止措置が取られた。
「ロヒプノール」は、1975年にスイスのロシュが発売。強力な効果がある一方、
離脱症状も強力。
作中では、泉水が勤務先から盗んだ薬。
◆芥川龍之介「トロッコ」
芥川龍之介は1892年東京生まれの小説家。
「蜘蛛の糸」「杜子春」「羅生門」「芋粥」「地獄変」など、優れた短編小説を多く残した。
純文学の新人賞名にもその名を残す。
「トロッコ」は、1922年の作品で、小田原・熱海間の鉄道建設で使われていた
トロッコに興味を示した少年がある日、工夫に交じってトロッコを押すことになったが、
ある時点から帰りの暗い道が不安になり……という話。
作中では、泉水が職場の女性との会話をする中で、
「人生は複雑なくらいがいいですよ」という女性の言葉には、
「退屈な事務仕事で毎日が過ぎていく、自分自身の人生が念頭にあったのかもしれない」
と想像し、そこからこの小説に退屈な人生を嘆く言葉があったことを思い出す場面が
登場する。
◆タウンページとハローページ
(個人的には)最近、見ることも使うことも無くなった書籍。
どちらもNTT東日本 or NTT西日本が発行する電話帳で、
「タウンページ」は、職業別電話帳で、職業名やサービス名をキーに電話番号を
探すことができる。
「ハローページ」は、五十音順の電話帳で、企業名、個人名を五十音順で
探すことができる。
作中では、泉水が飲み屋で出会った女性に、DNAの二重螺旋を説明しているときに、
彼女が「タウンページとハローページね」と答える場面が登場する。
◆岸田劉生「道路と土手と塀」
岸田劉生は、1891年東京・銀座生まれの洋画家。
代表作に、娘の麗子を題材とした一連の「麗子像」や、
作中に登場する「道路と土手と塀」などがある。
「道路と土手と塀」は泉水が小学生の春が描いた、台風後の風景を見た際に感じた、
「決して、本物そっくりではなかった。構図は歪んでいたし、遠近法も狂っている。
けれど、そのひしゃげ具合が台風の不穏な気配を際立たせた」のと
同じような感動をもたらしたと述べられている。
「岸田劉生」『フリー百科事典ウィキペディア日本語版』から「道路と土手と塀」
2019年1月6日 6:27 (UTC) URL : https://ja.wikipedia.org
◆トルストイ「クロイツェル・ソナタ」
レフ・トルストイは、1828年当時のロシア帝国生まれの小説家。
ドストエフスキー、ツルゲーネフと並び、19世紀ロシア文学を代表する文豪。
代表作に、「戦争と平和」「アンナ・カレーニナ」「復活」など。
「クロイツェル・ソナタ」は、1889年に発表された短編小説で、
浮気をした妻を刺し殺してしまった公爵が自らの体験を告白する。
作中では、性的なことを嫌う春に対して、泉水がこの小説の
「性を否定するなら、それじゃ、どうやって人類は存続してゆけるんでしょうね」
と言う台詞を引用する場面が登場する。
◆井伏鱒二「山椒魚」
井伏鱒二は1898年広島生まれの小説家。野間文芸賞や直木賞などの文学賞に加え、
文化勲章を授与されている。
代表作には、「山椒魚」」「黒い雨」「本日休診」など。
「山椒魚」については、「いまさら翼といわれても」の記事参照。
作中では、泉水と春の兄弟が子供の頃に読んだ本で、本作で幾度も台詞が引用される
キーとなる作品の一つ。
◆食うのに困り、店からパンを盗んで非難されるような悪童でも、桜の木を折った後に、「私がやりました」と手を挙げ、将来の活躍を期待される少年でもなかった。
泉水と春の父親を評した言葉。前半の「食うのに困り~」は、パンを盗んだことで
19年間監獄へ送られたジャン・バルジャンの生涯を描いた、
ヴィクトル・ユーゴーの小説「レ・ミゼラブル」を念頭に置いた表現と思われる。
後半部分「桜の木を折った後に~」は、アメリカ合衆国の初代大統領、
ジョージ・ワシントンの子供のころのエピソードとして知られる。
◆レンブラント「ユダヤの花嫁」
レンブラント・ファン・レインは、1606年当時のネーデルラント連邦共和国の
アムステルダム生まれの画家。光と闇の対比の巧みさに特徴がある。
代表作は、「夜警」「テュルプ博士の解剖学講義」など。
「ユダヤの花嫁」は、1667年の作品。作中ではゴッホがこの作品の前に、
もう2週間座っていられるなら十年寿命が短くなってもいいと言ったエピソードが登場する。
「レンブラント」『フリー百科事典ウィキペディア日本語版』から「ユダヤの花嫁」
2018年11月17日 11:37 (UTC) URL : https://ja.wikipedia.org
◆三島由紀夫の本で、金閣に放火した青年の青春小説
三島由紀夫が1956年に発表した長編小説「金閣寺」のことと思われる。
金閣寺で学ぶ学僧が、金閣の美に魅せられて放火にいたるまでの経緯を
精緻に描いた作品で、三島の代表作の一つ。
◆聖書に出てくる洪水
旧約聖書の創世記に大洪水が出てくる。エデンを離れた人間は次第に堕落し、
互いに争うようになったため、神は人間を生み出したことを失敗だったと考え、
リセットするために大洪水を起こした。しかし、ただ一人、救う価値があると
神が考えたノアに、大きな箱舟を用意し、そこに彼の家族と動物のつがいを乗せるよう
指示し助けたというエピソード。
◆ソドムの町
同じく旧約聖書の創世記に登場する都市の名前。大いに繁栄したが、
悪徳が栄えたため、神の怒りを買い、天からの火によって滅ぼされた。
◆コノハナサクヤビメ
日本神話に登場する女神で、天照大神の孫、瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)の妻。
「日本書紀」では木花開耶姫、「古事記」では木花之佐久夜毘売と表記される。
山幸彦、海幸彦の母親だが、彼らを身ごもった際に、瓊瓊杵尊に疑われたため、
作中で紹介されているように、身の潔白を証明するため、産屋に火をつけ、
その中で出産したエピソードが知られる。
富士山をご神体とする富士山本宮浅間大社及び全国の浅間神社で祀られている。
◆ローランド・カーク「Volunteered Slavery」
ローランド・カークは、1935年アメリカ・オハイオ州生まれの
盲目のジャズ・ミュージシャン。サクソフォン、フルート、トランペットなど、
多くの楽器を演奏した。
「Volunteerd Slavery」は、1969年に発表したアルバム。
作中では、春が父親に貸したアルバム。
◆芥川龍之介「地獄変」
「地獄変」は芥川龍之介の代表作の一つ。説話集「宇治拾遺物語」中の、
芸術のためには犠牲を厭わない「絵仏師良秀」を基に、芥川がアレンジした作品。
◆ビリヤードのキューを握っていた頃のポール・ニューマン
1961年公開のアメリカ映画「ハスラー」の主役を演じていた頃、または、続編の
1986年公開の「ハスラー2」で主役を演じていた頃の
ポール・ニューマンという意味だと思われる。
自らを最強だと信じる若きビリヤード・プレイヤー、
エディ・フェルソン(ポール・ニューマン)と、伝説のビリヤード・プレイヤー、
ミネソタ・ファッツとの対決を描いた作品。アカデミー撮影賞、美術賞を受賞。
(ハスラー2では、ポール・ニューマンはアカデミー賞主演男優賞を受賞)
作中では、放火にあった「仙台東ビジネスホテル」のフロントの男が、
彼を思い出すと表現されている。その際、「白髪の男」と表現されているため、
「ハスラー2」の頃のポール・ニューマンを指している可能性が高い。
「ポール・ニューマン」『フリー百科事典ウィキペディア日本語版』から1987年の写真
2018年12月23日 14:07 (UTC) URL : https://ja.wikipedia.org
◆仙台の名物であるカスタード入りの菓子
1979年から菓匠三全が販売する仙台銘菓「萩の月」を指すと思われる。
カステラ地の記事でカスタード・クリームを包んだ菓子で、
作中では、「仙台東ビジネスホテル」のフロントの男が放火犯は許せないが、
この菓子を土産で持ってくるなら許しても良いと話すシーンが登場する。
◆JPG、JPB、JPL、JADを頭文字とする言葉
JLGは何の略語かを話す泉水に対して、黒沢がクイズとしてJPGは何か分かるか?
と聞くシーンが搭乗する。そこで挙げられた言葉たち。
■ジャン・ポール・ベルモンド(JPB)
1933年フランス生まれの俳優。20世紀後半のフランスを代表する俳優の一人。
主な出演作に「勝手にしやがれ」「気狂いピエロ」「ボルサリーノ」など。
■ジャン・ピエール・レオ(JPL)
1944年フランス・パリ生まれの俳優。ヌーヴェル・ヴァーグの作品に多く出演。
代表作に、「大人は判ってくれない」「男性・女性」など。
■ジョン・アーチボルト・ドートマンダー(JAD)
アメリカの小説家、ドナルド・エドウィン・ウェストレイクによる、
「ドートマンダー」シリーズの主人公。泥棒。
■ジャン・ポール・ゴルティエ
1952年フランス生まれのファッションデザイナーの名前であり、彼のブランド名。
作中では、黒澤がこのブランドのジャケットを欲しがっており、
後に、葛城の自宅から盗んだと思われる金で購入したらしい記述がある。
◆人生は一箱のマッチに似ている。重大に扱うのは莫迦々々しい。重大に扱わなければ危険である
1923年から27年にかけて文芸春秋に掲載された芥川龍之介の箴言集「侏儒の言葉」
に登場する言葉。作中では、春が引用するシーンが登場する。
◆マネの「草上の昼食」
エドゥアール・マネは、1832年フランス・パリ生まれの画家。
印象派の先駆者として知られる。
代表作に「草上の昼食」、「オランピア」、「笛を吹く少年」など。
作中では、泉水が葛城の部屋を訪れた際、ベッドに全裸で横になる女性を見たときに
泉水が咄嗟に思い出したのが「草上の昼食」だった。
「エドゥアール・マネ」『フリー百科事典ウィキペディア日本語版』から「草上の昼食」
2019年1月4日 8:00 (UTC) URL : https://ja.wikipedia.org
◆ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」
ドストエフスキーについては、「羊をめぐる冒険」の記事参照。
「カラマーゾフの兄弟」は、1880年に出版されたドストエフスキー最後の長編小説。
「罪と罰」と並ぶ、彼の最高傑作とされるがとにかく長い。
カラマーゾフ家の三兄弟を中心に、父子関係、兄弟関係、異性関係、宗教問題など、
数多くのテーマを内包する。
作中では、泉水が遺伝子の会社に勤めながら、遺伝子の力を全面的に認めてしまうことは
許しがたいことだったと独白する場面で、この小説のことを思い出している。
具体的には、「カラマーゾフの力さ。カラマーゾフ的な低俗な力だよ」と、
遺伝子を自嘲する言葉を思い出した。
◆ギャスパー・ノエという監督のひどく挑発的な映画
ギャスパー・ノエは、1963年アルゼンチン・ブエノスアイレス生まれ
の映画監督。過激な性、暴力描写で知られ、代表作に「カノン」「アレックス」など。
作中で引用されている「ペニスの味わうたった九秒間の絶頂感が、
子に六十年の苦痛を強いる」という台詞は、短編映画「カルネ」で登場する台詞。
◆バタイユ「エロティシズム」
バタイユについては、「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」の記事参照。
「エロティシズム」は、1957年に発表した著作で、エロティシズムの意味、本質を
論じた。作中では、高校生の頃の春がこの本を何度も繰り返し読み返し、
納得のいかない顔をしていたと紹介。
◆シャガール
マルク・シャガールは、1887年当時のロシア帝国、現在のベラルーシ生まれの画家。
初期の前衛芸術運動の代表的画家の一人。代表作に、「青いサーカス」「誕生日」、
「私と村」「七本指の自画像」など。
作中では、泉水と春の父親が知り合いにもらったシャガール展の図録を手に取る
シーンが登場する。
◆目には目を
紀元前18世紀にバビロニアを統治したハンムラビ王が制定した法典に
見られる法の一節。人が誰かに傷つけられた場合、加害者への罰は
被害と同程度でなければならないという法。(ただし、お互いの身分に差がある
場合はその限りではない。例えば、自由人が奴隷を害した場合は、奴隷の持ち主に、
被害に相当する金額を支払わなければならない、など)
作中では、春が「加害者は自分のしたことと同じことを、やられるべきなんだ」と
主張するシーンで引用される。
◆シューベルトのアヴェ・マリア
シューベルトについては、「国境の南、太陽の西」の記事参照。
「アヴェ・マリア」は、1825年に作曲された晩年の作品。正式には、
「エレンの歌第3番」という。シューベルトの歌曲の中でも人気の高い作品。
作中では、春が葛城を殺害する場面で、泉水の耳元で聞こえていた曲。
◆Triumph
「勝利」を意味する英単語。春が父親が遺したメモに書き加えた単語。
ストーリー上の謎、ネタバレ
◆落書きと放火の関係は?
落書きがされた数日後、近くで放火事件が発生するという関係があった。
落書きの内容一覧は以下の通り。
(落書きの内容 - イニシャル - イニシャルが意味するアミノ酸)
①God
②can
③talk … GCT = アラニン
④Ants
⑤goto
⑥America … AGA = アルギニン
⑦280
⑧century
⑨ago … TCA = セリン
⑩Thank Give Apologize … TGA =終止コドン
放火された場所の一覧は以下の通り。
①株式会社シー・エス・エス … C
②ゴールドコースト(パチンコ屋) … G
③朝日不動産 … A
④TEAM(古着屋) … T
⑤生協 … C
⑥武田堂 … T
⑦アフタヌーン … A
⑧ジーン・コーポレーション … G
⑨東北ゼミナール … T
⑩アップル(古本屋)? … A
①、②のGとCは結びつき、③のTとAも結びつくというように、DNAの
二重螺旋構造を意味していた。
そのあと、泉水は3つずつ組み合わせてアラニン、アルギニン、セリン……と
繋げることを思いついたが、春は考えすぎと否定した。
加えて、①~⑩の場所は28年前仙台で起きたレイプ事件の現場を示していた。
◆落書き&放火事件を起こした犯人は誰か?
どちらも春が犯人だった。
◆なぜ春は二重螺旋構造の暗号を使ったのか?
泉水を巻き込むため。泉水はパズルが好きであり、また、自分の仕事に関係する
クイズであればなおさら熱中するだろうと推測したため。
春は泉水をある種のお守り代わりに巻き込んだのだ。子供のころから、
大事なときには春のそばに泉水がいた。それで縁起担ぎをしたのだ。
◆なぜ春は事件を起こしたのか?
レイプ事件の犯人である葛城に反省してもらうために、
現場近くで放火し、さらに写真を葛城に送り付けていた。
しかし、葛城は反省しなかったため、春はジョーダン・バットで葛城を殺した。
◆「狂人のノート」の意味は?
春の部屋にあった、有名人の名前がぎっしり書かれたノート。正常な人間が
書いたとは思えなかったため、泉水は狂人のノートと呼んだ。
実際には、例えば、チャイコフスキー、タキトゥス、アインシュタイン、ゴーギャン、
グレン・グールドは頭文字をとると、TTAGGGとなる。
これは細胞の寿命を表すテロメアのこと。それを延々書き続ければ、父親の
寿命も延びるのでないかと春は考えて、書き続けたノートだった。
◆黒澤の本業とは?
探偵は副業だが、本業は泥棒と思われる。そして、葛城の家に空き巣に入り、
20万円を盗んだもの彼であり、その金でジャン・ポール・ゴルチエのジャケットを
買ったのだと思われる。
(フィクション中の泥棒である、ジョン・アーチボルト・ドートマンドーに対して、
仲間意識がある言っていたことからも彼の本業は泥棒だとわかる)
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