調べたくなる言葉
◆ボブ・ディラン「風に吹かれて」
1941年アメリカ・ミネソタ州生まれのミュージシャン。1960年代以降、
長く活躍し、2016年にはノーベル文学賞を受賞。
代表作は、「ライク・ア・ローリング・ストーン」(1965年)、
「ミスター・タンブリング・マン」(1965年)、「時代は変わる」(1964年)など。
「風に吹かれて」も代表曲の一つで、1963年発表のアルバム、
「フリーホイーリン・ボブ・ディラン」への収録曲。
作中では、椎名が昔好きだった女の子が好きだったという理由で覚えていた曲で、
書店を襲撃したときには10回口ずさんだ。
◆ゾンカ語
ブータンの国語で、チベット語の南部方言に分類される。
ゾンカの「カ」は「語」と言う意味なので、本来はゾン語と言う意味。
「ゾン」は、「僧院、行政、軍事の機能を併せ持つ城砦」で話される言葉という意味。
作中では、ドルジの母語。
◆ライク・ア・ローリングストーン
1965年にリリースされたボブ・ディラン最大のヒット曲(米ビルボード最高2位)。
ロック史上、最も重要な曲の一つとされ、2004年に米雑誌「ローリング・ストーン」誌
が選んだ「オールタイム・グレイテスト・ソング500」では1位となっている。
作中では、椎名が街で「風に吹かれて」を口ずさんでいたとき、話しかけてきた
中年の男がこの曲と勘違いするシーンが登場する。
◆シーディーフォーの
「cluster of differentiation 4」の略。ヘルパーT細胞などの免疫に関わる細胞が、
表面に発現している糖タンパクで細胞表面抗原の一つ。免疫細胞間の抗原情報の
伝達に関与しているため、CD4を発現している免疫細胞が減る=免疫機能低下、
を意味する。HIVに感染すると、CD4を発現するT細胞の数が徐々に減少していく。
そのため、CD4発現T細胞の数がAIDS発症と診断する指標に使われている。
(ある一定以下になったところで発症と判断)
作中では、ドルジが河崎のバッグに仕込んだレコーダーから聞こえてきた
河崎と医師との会話の一部。河崎がHIVに感染していることを示唆する。
◆仁和寺の法師
吉田兼好が鎌倉時代に著したとされる随筆「徒然草」の
第五十二段に登場するエピソード。原文は以下の通り。
仁和寺にある法師、年寄るまで、石淸水を拝まざりければ、心うく覚えて、
ある時思ひ立ちて、たゞひとり、徒歩よりまうでけり。
極樂寺・高良などを拝みて、かばかりと心得て帰りにけり。
さて、かたへの人にあひて、
「年比思ひつること、果たし侍りぬ。聞きしにも過ぎて、尊くこそおはしけれ。
そも、参りたる人ごとに山へ登りしは、何事かありけん、ゆかしかりしかど、
神へ参るこそ本意なれと思ひて、山までは見ず」と言ひける。すこしのことにも、先達はあらまほしき事なり。
仁和寺の法師がずっと行きたいと思っていた石清水八幡宮に思い立って出かけたが、
石清水まで行かず、手前の極楽寺などを見ただけで帰ってきてしまった。
何事をするにも、案内人がいた方が上手く行くという教訓を示している。
作中では、河崎との関係を聞こうとした椎名が、麗子に言われた言葉。
麗子は、「知ったふりをせず何でもかんでも人に頼れ、という教えだと信じている」
と言い、それを聞いた椎名は「もっと核心を突く質問をしろ」というアドバイスと捉えた。
ストーリー上の謎、ネタバレ
◆2年前と現在の人間関係まとめ
・2年前
ドルジ…ブータンからの留学生。琴美と同棲している。日本語は不自由。
最初にペット殺しの3人組に襲われた際には、傘を使って撃退。
琴美…麗子の店でバイト中の学生。定期入れを落としたことで3人組に住所を知られ、
ターゲットとして狙われる。ファーストフード店に3人がいることを、警察へ通報するが、
裏口から逃げられ、彼らの車の前に立ちはだかったことで轢かれて死んでしまう。
河崎…琴美の元恋人。ドルジに日本語を教えたがっている。琴美の死後、3人組への
復讐計画をドルジと練るが、HIVに感染したことを苦に自殺。
麗子…ペットショップの店長。このときはバイトとして琴美を雇っていた。
また、当時は他人に興味は無かった。
ペット殺しの3人組(男2人、女1人)…連続ペット殺しの犯人。ペットから人間にも
ターゲットを広げようとしていた。最初の1人目として琴美を狙うが、
ファーストフード店にいたところを通報されてしまう。車で逃げようとしたところで、
琴美に道を遮られ、彼女を轢いた勢いで道路に泊まっていたトラックにぶつかり
トラックが積んでいた木材が落ちてきて3人の内、江尻を残して2人死亡。
・現在
椎名…大学進学で仙台にやってきた学生。実家は小さな靴屋。
引っ越してきたアパートでボブ・ディランを口ずさんだばっかりに、
ドルジ、琴美、河崎の3人の物語のラストに巻き込まれてしまう。
書店を襲った際には裏口を担当。
ドルジ…椎名には河崎を名乗っている。河崎の指導のお陰で日本語が上達。
椎名を誘って広辞苑を奪うために書店を襲う。
麗子…ペットショップの店長。バイトには2年前にダックスフントを返品にきたときに
殴った女の子を雇っている。琴美と河崎の死を経て、助けられるひとは助けたい
いうように考え方が変わってきている。
江尻…ペット殺しの3人組のうち、唯一生き残った。実家の書店で働いている。
店にいたときにドルジに襲われそのまま拉致された。
◆ドルジはなぜ書店を襲ったのか?
表向きの理由は、広辞苑を奪うため。実際には店員をしていた江尻を殺すため。
計画では、ブロックで殴って殺し、江尻の車に乗せて空き地に移動。
そこに止めていた自分の車にしたいを移し替えて椎名と合流する計画だった。
しかし、実際には殴ったときには死なず、気を失っていただけだったので、
計画を変更し、人のあまり来ない、海沿いの林へ連れて行った。
そこで、江尻を木に縛りつけ、鳥葬にするつもりだった。
◆なぜ椎名に裏口を固めさせたのか?
2年前、ファーストフード店でペット殺しの犯人を見つけて、警察へ通報したとき、
裏口から逃げられたことで、琴美を死なせることになってしまった。
その反省から、あるいはそのトラウマから裏口から逃がさないことにこだわったのだ。
◆河崎=ドルジは最後どうなったのか?
明確に語られていないが、椎名と一緒にコインロッカーへ神様=ボブ・ディランを
閉じ込め、別れた後、ポメラニアンを助けるために道路に飛び出して
轢かれて死んでしまったのではないか。幽霊?の琴美が見たように。
また、その時に、「わたしは近いうちに、死んだドルジと再会できるのではないか」
とも語っている。
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