ストーリー上の謎、ネタバレ
◆長すぎる通過列車
いつまでも続く回送列車ついて、
亡き妻に「それにしてもこの列車、長くないか」と言うラストシーン。
どういう意味があるのか。その謎を解く鍵は、
梶を自殺させた直後の鯨に、元カウンセラーの田中が語った次の言葉にある。
「兆候はあるんですよ、幻覚のしるしは。例えば、街で立っている時に、
目の前の信号の点滅がちっとも止まなかったり、
歩いても歩いても階段が終わらなかったり。
駅にいる時も、通過する列車がいつまで経っても通り過ぎない、
とか、この列車ずいぶん長いなあ、なんて思ったら、まずい兆候ですよ。
そういうのは全部、幻覚の証拠です。
信号や列車は、幻覚のきっかけになりやすいんです。
信号はたいがい見始めの契機で、列車は目覚めの合図だったりします」
つまり、いつまでの通り過ぎない列車は幻覚からの目覚めの合図。
おそらくは長かった悪夢のような幻覚がここで終わり、鈴木の人生がリスタートする、
という意味だと思われる。
それでは、幻覚はどこから始まっていたのか。
田中の発言からは、信号の点滅が終わらないことが、
幻覚を見始めの契機ということが分かる。
そこで、そういう表現がされている箇所を探すと、
鈴木が比与子から、黄と黒を殺せと言われた直後に次のような描写がある。
茫然とした気分で、フロントガラスを眺めた。
交差点の歩行者用信号の青色が、点滅をはじめる。
その点滅がゆっくりに見える。いくら待っても、赤にならない。
この信号いつまで点滅しているんだよ。
かなり序盤。この物語は鈴木が見ていた幻覚、ということが言えるかもしれない。
調べたくなる言葉
◆グラスホッパー
直訳ではgrass=草、hopper=跳ぶものから、
バッタのこと。
◆ジャック・クリスピン
架空のロック・ミュージシャン
◆ツノゼミ
ツノゼミはカメムシ目の昆虫。セミの背中にヘルメットのような、角のような、
奇妙が構造が見られることが特徴。
<参考動画(虫が苦手な方はご注意ください)>
ちなみに、ツノゼミは英語で「Treehopper」というらしい。
◆ローリング・ストーンズ
イギリスのロックバンド。’62年から活動中。
現在のメンバーはミック・ジャガー(ボーカル)、キース・リチャーズ(ギター)、
ロン・ウッド(ギター)、チャーリー・ワッツ(ドラムス)の4人。
代表曲は「Satisfaction」「Jumping Jack Flash」など。
<参考動画>
◆ブライアン・ジョーンズ
ローリング・ストーンズの元メンバー。
’62年の結成から、’69年までの初期に所属。
結成当初はリーダーであったが、徐々に麻薬の影響が大きくなり、’69年に脱退。
(直後にプールで溺死)
こうして調べられるということは、所属していた証拠はあると言えるのかもしれない。
◆キューブリックの映画ならここで血の洪水が~
シャイニング(原作:スティーブン・キング)では、
エレベーターから大量の血が、洪水のように流れ出すシーンが何度も登場する。
◆群集相(群生相)
トノサマバッタは通常緑色。
しかし、何世代も密集した環境で育つと、
色は黒っぽく、翅は長く、性格は獰猛になる。
群集相のバッタは、集団で飛び回り、行く先々の植物を食べ尽くしてしまうため、
時に農作物に大きな被害をもたらす(=蝗害という)
◆ガブリエル・カッソ
架空の映画監督
◆タロとジロ
第一次南極観測隊に同行した樺太犬の兄弟。
天候の悪化で、鎖に繋がれたまま1年間、南極に放置され、
生存が絶望視されたが、奇跡的に生存していたことで知られる。
後に、2頭の生存を題材に映画「南極物語」が製作された。
◆ラスコーリニコフとソーニャ
どちらも、鯨の愛読書「罪と罰」の登場人物。
(ラスコーリニコフが主人公、ソーニャはヒロイン)
<次回作>
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