「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」の謎・ネタバレ

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調べたくなる言葉

◆巨大な鯨に呑まれ、その腹の中で生き延びた聖書中の人物

 旧約聖書、ヨナ書の登場人物ヨナは、鯨に呑み込まれ、三日三晩の後、
神の命令で海岸に吐き出された。

 

◆ナパのカベルネ・ソーヴィニョン

 ナパは、アメリカ・カリフォルニア州の高級ワイン産地、ナパ・バレーのこと。
カベルネ・ソーヴィニョンは、世界中で広く栽培される赤ワイン用のブドウ品種。
作中では、つくると沙羅が行ったバーで、沙羅が注文したワイン。

 

◆ブルックス・ブラザーズ、ポロ

 どちらもアメリカを代表するトラディショナル・ブランド。
ブルックス・ブラザーズは、1818年ニューヨークで創業した世界最古の紳士服ブランド。
ポロ・ラルフ・ローレンは、1967年に同じくニューヨークで創業したブランド。
作中では、つくるの母親の好みがこの2ブランドと紹介された。

 

◆ヴォルテール

 1694年フランス・パリ生まれの哲学者、小説家、劇作家。
啓蒙主義思想を代表する人物。作中で、つくるが口にした「思考とは髭のようなものだ。
成長するまでは生えてこない」という言葉は、著書「断片」に収録。

 

◆新宿に本社がある電鉄会社

 おそらく、「小田急電鉄」のことと思われる。

 

◆フランツ・リストの「ル・マル・デュ・ペイ」

 リストのピアノ独奏曲集「巡礼の年」のうち、1855年に出版された
「第1年:スイス」に収録される曲。「ル・マル・デュ・ペイ」の意味は、作中で、
灰田が説明するように「田園風景が人の心に呼び起こす、理由のない哀しみ」。
作中では、シロ(あるいはユズ)が高校時代によく弾いていた曲。
また、灰田のLPレコード、ロシアのピアニスト「ラザール・ベルマン」演奏のもの。
「ラザール・ベルマン」は、1930年ソ連のレニングラード生まれのピアニストで、
超絶技巧と、ロマンティックな表現が特徴。

◆クラウディオ・アラウ

 クラウディオ・アラウ・レオンは、1903年チリ生まれのピアニスト。
11歳のときにドイツへ渡り、リストの弟子の一人、マルティン・クラウゼに師事。
徐々に頭角を現し、1927年にはジュネーブ国際ピアノコンクールで1位入賞。
その後、ナチスの台頭するドイツからアメリカへ渡り、
そこで不動の名声を手にする。
作中では、灰田がリストを正しく、美しく弾ける人の例として、
ラザール・ベルマンとクラウディオ・アラウを挙げていた。

 

◆アーノルド・ウェスカー「調理場」

 1932年イギリス・ロンドン生まれの劇作家。労働者階級の生活を描いた、
「大麦入りのチキンスープ」「根っこ」「僕はエルサレムのことを話しているのだ」
の通称、ウェスカー三部作で名声を博した。
「調理場」は1957年発表の初期の作品。2000年には「ザ・キッチン」として、
ミュージカル化され、日本で上映されている。
作中では、灰田の「自由を奪われた人間は必ず誰かを憎むようになります」という考え
の例として、「コックはウェイターを憎み、どちらもが客を憎む」という
「調理場」の一節を引用している。

 

◆ジョルジュ・バタイユ

 1897年フランス生まれの哲学者。ニーチェ、ヘーゲル、マルクスらの影響を受け、
さらに神秘主義的傾向を持つ。字面からして既に難しい予感がする。
作中では、灰田の父が、下働きをしていた大分の温泉宿で、休憩中にバタイユの
選集を読んでいたことが、緑川に興味を持たれた一因。

 

◆セロニアス・モンクの「ラウンド・ミッドナイト」

 セロニアス・モンクは、1917年アメリカ・ノースカロライナ州生まれの
ジャズ・ピアニスト。個性溢れる即興演奏で知られる他、ラウンド・ミッドナイトや、
ストレート・ノー・チェイサー、ブルーモンクなど、数多くの名曲を残した。
作中では、緑川が中学校の音楽室で弾いた曲。

 

◆オルダス・ハスクレー「知覚の扉」

 オルダス・レナード・ハスクレーは、1894年イギリス生まれの作家。
代表作に、遺伝子選別から始まり、人生を徹底的に管理されたディストピア世界を
描いた「すばらしい新世界」がある。
1954年発表の「知覚の扉」は、自ら幻覚剤の実験台となったときの経験を基にした作品。
そこでは、自らの内面の変容が語られている。作中では、緑川が持つ特別な能力、
「知覚そのものを拡大」する能力について、「知覚の扉」を押し開くことと
表現されている。

 

◆ワグナーの指輪

 リヒャルト・ワーグナー作曲のオペラ「ニーベルングの指輪」を指すと思われる。
「ラインの黄金」「ワルキューレ」「ジークフリート」「神々の黄昏」の
四部から成り、演奏時間は約15時間を要する長大な作品。
「ラインの黄金」から作られ、持つものに世界を手に入れられる力をもたらす
指輪を巡る壮大な叙事詩。
作中では、緑川の特殊な能力は、彼が死んだあとどうなるかという、灰田父との会話で、
「人から人へとまた引き渡されていくのかもしれない。ワグナーの指輪みたいにな」
と紹介されている。

 

◆コナン・ドイルの「失われた世界」

 アーサー・コナン・ドイルは、1859年イギリス・エディンバラ生まれの作家、医師。
1884年に発表した「緋色の研究」から始まる、「シャーロック・ホームズ」シリーズ
の著者として世界的に知られる。その他、SF小説の「チャレンジャー教授」シリーズや、
歴史小説の「ジェラール准将」シリーズも手掛けている。
「失われた世界」は、1912年に発表されたSF小説。南米アマゾンの奥地の断崖上に、
古代に絶滅した生物たちが生き残っている場所「失われた世界」が発見された。
発見者であるチャレンジャー教授一行は、失われた世界へ赴き、
そこで大冒険を繰り広げるというストーリー。
作中では、アカやアオが生まれてから一度も名古屋を出ていないことに対して、
沙羅が、名古屋は失われた世界みたいな場所なのかと尋ねる場面が登場する。

 

◆エルヴィス・プレスリー「ラスヴェガス万歳」

 エルヴィス・プレスリーについては、「風の歌を聴け」の記事参照。
「ラスヴェガス万歳」は、1964年に発表されたシングル「ホワッド・アイ・セイ」
のB面収録曲。作中では、アオの携帯の着信音。

 

◆ポルシェのカレラ4 タルガトップ

 ポルシェ911カレラ4は、1964年からポルシェが販売しているスポーツカー。
カレラはかつて行われていた自動車レース「カレラ・パナメリカーナ・メヒコ」に、
特別仕様車を出していたことから。4は4WDの意味。
タルガトップは、オープンカーの一種で、ルーフパネルは外せるが、
ピラーは固定されている。作中では、アカが乗っている車。

「ポルシェ・911」『フリー百科事典ウィキペディア日本語版』
2018年11月25日 19:25 (UTC)  URL : https://ja.wikipedia.org

 

◆シューマンの「子供の情景」中の「トロイメライ」

 ロベルト・アレクサンダー・シューマンは、1810年ザクセン王国生まれの作曲家。
ドイツ・ロマン派を代表する作曲家であり、交響曲、ピアノ曲、歌曲など
多くの優れた曲を残した。代表曲に、「交響曲第一番 変ロ長調 春」、
「ピアノ協奏曲」「子供の情景」など。
「子供の情景」は、1839年発表のピアノ曲。全13曲からなり、そのうち、
トロイメライは、第7曲目で、意味は夢、夢想。
作中では、アカが覚えていたシロが高校時代に演奏していた曲。
(彼はル・マル・デュ・ペイは覚えていなかった)

 

◆「羊たちの沈黙」のレクター博士

 「羊たちの沈黙」は、アメリカの小説家、トマス・ハリスによる1988年の小説。
あるいは、同作を原作とする1991年公開のアメリカ映画。
第64回アカデミー賞にて主要五部門を独占受賞した。
主人公ハンニバル・レクター博士は、優秀な精神科医である一方、人肉を好んで食べる
猟奇殺人者の顔を持つ。レクター博士とヒロインであるFBI訓練生、
クラリス・スターリングの奇妙な交流を描いた作品。
作中では、つくるが訪問した駅の駅長が、フィクション中の6本指の人物の例として、
レクター博士を挙げた。

 

◆ワム!

 「アフターダーク」の記事参照。
作中では、沙羅が高校時代に彼らのCDを全部持っていたと話す以下シーンが登場。

ボーイフレンドなんて影もかたちもなかったし、しつこいにきびにも悩まされていた。
『ワム!』のCDも全部持っていた。母親の買ってくれる白いコットンのさえない下着を
着けていた。

文脈すると、ださい、いけてないという意味だろうか。

 

◆シベリウス、アキ・カウリスマキ、マリメッコ、ノキア、ムーミン

 ジャン・シベリウスは、1865年フィンランド・ハメーンリンナ生まれの作曲家。
7つの交響曲のほか、多数の音詩、交響詩を残した。
代表作に「フィンランディア」「交響曲第2番」など。

アキ・カウリスマキは、1957年フィンランド・オリマッティラ生まれの映画監督。
代表作に「過去のない男」(2002年)、「希望のかなた」(2017年)など。
マリメッコについては、「ダンス・ダンス・ダンス」の記事参照。
ノキアは、1865年設立の通信機器メーカーであり、フィンランドを代表する大企業。
ムーミンは、フィンランドの作家、トーベ・ヤンソンの小説及び、
小説を原作とする漫画、アニメ作品の主人公。
全て作中で、つくるが上司にフィンランドにあるものとして説明した単語。

 

◆フォースと共に歩みなさい

 映画「スター・ウォーズ」中の有名なセリフ。
「ダンス・ダンス・ダンス」でも同様の引用あり。
作中で、フィンランドへ向かうつくるに沙羅が掛けた言葉。

 

◆ホイヤー

 スイスの高級時計メーカー、タグ・ホイヤーのこと。
(1985年まで社名はホイヤーであったため、
60年代初期に造られたつくるの時計はホイヤー)
1860年創業。代表的なモデルにカレラなど。作中では、つくるがこのブランドの
古い自動巻きの時計を付けている(父親の形見)
(以下Amazonリンク画像はカレラ)

タグ・ホイヤー メンズ腕時計 カレラ WAR211A.BA0782

 

◆ヘルシンキとハメーンリンナ

 つくるが、フィンランドで訪れた場所。ハアタイネン家の普段の家がある
ヘルシンキとサマーハウスがあるハメーンリンナ。

 

◆エルク

 シカ科に属する動物。ユーラシア大陸に住むヘラジカの呼び名(北米ではムース)
体長2.4~3.2m、体重200~800kg程度と、シカ科のうち最大の種。
作中では、ハメーンリンナへ向かうつくるに、オルガが気を付けるように言った動物。
こんなでかい動物にぶつかった日には、車の方がダメになってしまう。

Bigbullmoose.jpg

「ヘラジカ」『フリー百科事典ウィキペディア日本語版』
2018年6月3日 23:05 (UTC)  URL : https://ja.wikipedia.org

 

◆ダイ・ハード12

 「ダイ・ハード」シリーズは、1988年に1作目が公開されたアメリカの
アクション映画。1作目のヒットで続編が制作され、2018年12月現在で、
5作目までが公開されている。

 

◆ヴィルテュオーゾ

演奏の格別な技巧や能力によって達人の域に達した、超一流の演奏家を意味する英語からの借用語。
「ヴィルテュオーゾ」『フリー百科事典ウィキペディア日本語版』
2016年4月15日 13:18 (UTC)  URL : https://ja.wikipedia.org

作中では、つくるが見た長い奇妙な夢の中で、彼はピアノ・ソナタを演奏しながら、
自らの演奏を「ヴィルテュオーゾ的構造を持ちながらも、見事に美しく内省的な
音楽だった」と感じた。

 

◆1995年の春に東京で実際に起こったこと

 1995年3月20日、宗教団体「オウム真理教」が東京の地下鉄で起こした無差別テロ事件。
猛毒ガス・サリンが、走行中の列車内で撒かれ、13人が死亡、
6,000人以上が負傷するという未曽有の大事件。
村上春樹は、同事件の被害者やその関係者へのインタビューをまとめた、
「アンダーグラウンド」、及び、オウム真理教の信者、元信者へのインタビューをまとめた、
「約束された場所で-underground2」という著作を残している。

 

ストーリー上の謎、ネタバレ

◆タイトルの意味

 高校時代の5人組のうち、つくる以外の4人は名前にアカ、アオ、シロ、クロの
色を持っていた。加えて、特徴が無く中庸という自己認識 =「色彩を持たない」

巡礼については、辞書的な意味は以下の通り。

聖地や霊場を順に参拝して信仰を深め,心身のよみがえりと新生の体験また利益(りやく)を得るための宗教行為。

出典:世界大百科事典 第2版

16年の時を越えて、かつての親友たち、アオ、アカ、クロに会いに行き、
16年前に何が起きたのかを明らかにすることは、「心身のよみがえりと新生の体験」
そのものと言えるのではないだろうか。
(ただし、巡礼の対象にシロが入っていないことが引っかかるが……)

 

◆つくると親友5人の高校卒業後の経歴まとめ

・多崎つくる
 東京工業大学?
 (作中の記述:東京の工科大学、授業料が高くない。名のある工科大学)
 小田急電鉄(作中の記述:新宿に本社)

・赤松慶
 名古屋大学経済学部(作中に直接記述あり)
 メガバンクのどこかだが特定不可(作中の記述:メガバンク)
 サラ金のどこかだが特定不可(作中の記述:中堅どころの金融会社。
名古屋資本の会社で早い話いささか荒っぽい噂のあるサラ金)
 BEYOND

・青海悦夫
 愛知学院大学?(作中の記述:ラグビーが強いことで有名な私立大学の商学部)
 (条件を満たすのは他に名古屋学院大学だが、よりラグビーが強い方)
 名古屋トヨペット㈱→レクサス高岳 or  トヨタカローラ愛豊㈱→レクサス 名古屋西
 (作中の記述:
レクサスのショールームは名古屋城に近い静かな一画にあった)

・白根柚木
 愛知県芸術大学or名古屋音楽大学or名古屋芸術大学(特定不可)
(作中の記述:音楽大学のピアノ科)
 ピアノ教師(名古屋:勤め先不明→浜松:ヤマハの音楽教室)

・黒埜恵理
 金城学院大学or愛知淑徳大学or椙山女学園大学(特定不可)
(作中の記述:英文科が有名な私立の女子大)
 愛知県立芸術大学工芸科(作中で直接記述あり)

 

他にも、灰田は何故いなくなったのか?、沙羅は最終的につくるを選んだのか?等、
謎は残っていますが、完全な推測以上のことはできない(と少なくとも思える)ため
今回は省略いたします。

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