※この記事では、角川文庫版の下巻のみについて記述しています。
上巻についての記事はこちら。
中巻についての記事はこちら。
調べたくなる言葉
◆エンリコ・ダンドロ
1107年ヴェネツィア生まれの政治家で、1192年から1205年にかけて
ヴェネツィアの第41代元首(ドージエ)を務めた。第4回十字軍を率いて、
ヴェネツィアの利益のために、同じキリスト教国の東ローマ帝国首都、
コンスタンティノープルを攻めてこれを攻略。ラテン帝国を設立した。
その際、ヴェネツィア領の拡大と、コンスタンティノープルの芸術品を
ヴェネツィアへ送った。彼はそのままコンスタンティノープルで没したため、
当地のハギア・ソフィアへ埋葬された。
作中では、ゾブリストが遺したヒント「不実な総督」が彼のことであり、
ラングドンは、エットーレのヒントからドレの絵画、
「十字軍参加を解くエンリコ・ダンドロ」を思い浮かべ、
「不実な総督」=「エンリコ・ダンドロ」に思い至った。
「エンリコ・ダンドロ」『フリー百科事典ウィキペディア日本語版』から
「第4回十字軍参加を説くエンリコ・ダンドロ」
2018年9月9日 3:00 (UTC) URL : https://ja.wikipedia.org
◆トプカプ宮殿
オスマン帝国皇帝、メフメト2世がコンスタンチノープル攻略後に建設した宮殿。
以後、1853年まで改修を重ねながら宮殿として使われた。
「トプカプ」は「大砲の門宮殿」の意で、宮殿として使われなってからの名。
現在は博物館となっている。作中では、ラングドンが長い歴史を持つ
コンスタンティノープル=イスタンブールの歴史を語る中で、
ブルー・モスクなどと共に名前を挙げた。
「トプカプ宮殿」『フリー百科事典ウィキペディア日本語版』
2018年4月23日 11:22 (UTC) URL : https://ja.wikipedia.org
◆ブルー・モスク
イスタンブールを代表するモスクの一つで、
正式名称はスルタンアフメト・モスク。白地に青い装飾タイルで飾られた
色調の美しさからブルー・モスクと呼ばれる。
1616年に時のスルタン、アフメト1世によって建設された。
「スルタンアフメド・モスク」『フリー百科事典ウィキペディア日本語版』
2018年8月27日 22:18 (UTC) URL : https://ja.wikipedia.org
◆アヤソフィア
イスタンブールに現存する博物館。現在残る建物は、537年に東ローマ皇帝、
ユスティニアヌス1世によって建設されたギリシャ正教の教会が基になっている。
当時はコンスタンティノープル総主教座が置かれた。
その後、エンリコ・ダンドロが建国に関わったラテン帝国の時代には、
カトリックの影響下にあり、さらに1453年のオスマン帝国、メフメト1世による
征服後はイスラム教のモスクとして使われ、最終的にはトルコ共和国成立後の
1935年からは博物館となっている。ビザンティン建設の最高峰とされ、
オスマン帝国の時代にも第一級の格式を誇るモスクであった。
作中では、エンリコ・ダンドロの墓がここにあったことで、
ラングドンら一行が訪れる。
「アヤソフィア」『フリー百科事典ウィキペディア日本語版』
2018年12月3日 10:29 (UTC) URL : https://ja.wikipedia.org
◆ブリューゲルの「死の勝利」
ピーテル・ブリューゲルは、1525年ごろ現在のオランダで生まれた画家。
農民たちの生活を多く描いたことから農民画家と呼ばれる。
息子二人をはじめ一族に多くの画家がいる。
代表作は、「雪中の狩人」「農民の踊り」「バベルの塔」など。
「死の勝利」は、1562年頃に制作された作品で、ペストが階級の上下を問わず、
人々を死に誘うのを著した様式の絵画。作中では、ラングドンが、ゾブリストが造った
病原菌が世界に広まる様を想像してこの絵を思い浮かべた。
「死の勝利(ブリューゲル)」『フリー百科事典ウィキペディア日本語版』
2019年2月24日 13:20 (UTC) URL : https://ja.wikipedia.org
◆ジョン・シンガー・サージェントの「アヤソフィア」
ジョン・シンガー・サージェントは、1856年フィレンツェ生まれの
アメリカ人画家。キャリアの前半では、上流階級の人々を中心とした優雅な肖像画
を多く残し、ある時期以降は水彩の風景画を主に制作している。
代表作は、「マダムX」「カーネーション、リリー、リリー、ローズ」など。
作中で、ラングドンは「この空間のきらびやかな雰囲気を正確にとらえた絵」を
彼の「アヤソフィア」一つしか知らないと述べている。
◆フランツ・リストの「ダンテ交響曲」
フランツ・リストについては、「国境の南、太陽の西」の記事参照。
「ダンテ交響曲」は、1856年に完成した交響曲で、正式名称は、
「ダンテの『神曲』による交響曲」で、「地獄」と「煉獄」の2楽章からなる。
(第3楽章が無いのは、ワーグナーから「天国の喜ばしさを音楽で表現するのは
不可能」とアドバイスされたため。天国を仰ぎ見るという形で終わっている)
作中では、ゾブリストがウイルスを隠した「沈んだ宮殿」にて、
「匿名の慈善家による提供」の無料コンサートで演奏されていた曲。
もちろん、「匿名の慈善家」はゾブリストのことと思われる。
◆ターキッシュ・デライト
トルコ語では、「ロクム」と呼ばれる菓子で、
溶かした砂糖にデンプンを加えて、飴状になったところで、ナッツを加え、
冷やして固めたもの。作中では、逃げるシエナを追うラングドンの耳に、
この菓子を売る声を聴く場面が登場する。
「ロクム」『フリー百科事典ウィキペディア日本語版』
2018年5月3日 16:33 (UTC) URL : https://ja.wikipedia.org
ストーリー上の謎、ネタバレ
◆ラングドンの移動経路
①ボストン 教鞭をとる、ボストンにあるハーバード大学から強引に連れ去られた
②フィレンツェ 目が覚めたらフィレンツェの病院で、謎解きを始める羽目に
③ヴェネツィア ダンテのデスマスクの暗号が指し示すヴェネツィアへ
④イスタンブール 求める総督の墓がここにあることを知って移動
⑤ボストン 全ての謎を解いた後で、帰路へ
◆ストーリー上の謎
■ボッティチェルリの「地獄の見取り図」が示すのは?
絵の下方、「悪の濠(マーレボルジェ)」のオリジナルには
無い文字が追加されている。それは①C,A,T,R,O,V,A,E,Rの9文字と、
②「真実は死者の目を通してのみ見える」。
①については、そのままでは意味が無いが、文字が追加された絵の位置も
変更(トランプを一回シャッフルした状態)されており、正しい配置に戻すと、
「CERCA TROVA(チェルカ・トローヴァ=尋ねよ、されば見いださん)」となる。
この文字列は、ヴェッキオ宮殿の五百人広場にあるジョルジョ・ヴァザーリの壁画、
「マルチャーノ・デッラ・キアーナの戦い」の上部、肉眼ではほとんど見えない
位置に書かれていた文字だった。
■ヴェッキオ宮殿にあるものとは?
チェルカ・トローヴァの文字はヴェッキオ宮殿を示していた。
そして、もう一つのヒント、「真実は死者の目を通してのみ見える」とは、
ヴェッキオ宮殿に保管されているダンテのデスマスクを示していた。
(が、既にデスマスクはラングドン自身とイニャツィオ・ブゾーニによって、
持ち去られていた)
■天国の二十五とは?
死に瀕したイニャツィオ・ブゾーニがラングドン宛てに残したメッセージで、
持ち去ったデスマスクの隠し場所を示したヒント。
天国とはダンテの「神曲」の「天国編」のことであり、二十五はその第二十五歌を指す。
そして、天国編第二十五歌で語られているヒントは、以下の通り。
「わたしはそこへ詩人としてもどり、わたしの洗礼盤の前で冠を授かることになるだろう。」
「わたし」はもちろんダンテのこと。「わたしの洗礼盤」は、ダンテが洗礼を施された
サン・ジョバンニ洗礼堂を示している。また、ブゾーニがメッセージで、
「門は開いているが」と話している門とは通常は閉じられている「天国の門」のこと。
■ダンテのデスマスクが示すのは?
水盤の中に沈められていたダンテのデスマスクには、裏側に「PPPPPPP」
の文字が記されていた。Pはペッカートゥム=罪(ラテン語)を表しており、
Pが7つで七つの大罪を表す。これは、「神曲」で、煉獄の入り口で、天使によって
書かれる文字であり、煉獄の各層を上るごとに一つずつ消され、文字が全て消されたとき
つまり、頂上へ到着したときに全ての罪が浄化されるのである。
というエピソードに基づいて、デスマスクの「PPPPPPP」を消すと、
更に文字が現れる。
おお、健やかなる知性を持つ者よ
あいまいな詩句の覆いの下に
隠された教えを見抜け。
馬の首を断ち
盲人の骨を奪った
不実なヴェネツィアの総督を探せ。
黄金色をした聖なる英知のムセイオンのなかでひざまずき
地に汝の耳をあて
流れる水の音を聞け。
深みへとたどり、沈んだ宮殿に至れば……
かの地の闇に地底世界の怪物が待ち
それを浸す池の水は血で赤く染まるが
そこでは水面に映ることはない……星々が。
この文字列を見たラングドンらは、ヴェネツィアに向かうが、
「不実なヴェネツィアの総督」=エンリコ・ダンドロの墓は、イスタンブールにあり、
さらに、「黄金色をした聖なる英知のムセイオン」は、サン・マルコ大聖堂ではなく、
アヤソフィアを表していた。そして、イスタンブールの「沈んだ宮殿」にこそ、
ゾブリストが仕掛けたウイルスが眠っていたのだった。
■ゾブリストのしたこととは?
ベルトラン・ゾブリストは、ラングドンらがウイルスの場所を探し当てる1週間前には、
「沈んだ宮殿」からウイルスを拡散し終えていた。
そして、彼が散布したウイルスとは、予想されていたような多くの人々を殺す
病原体(それこそペストのような)ではなく、細胞に決められたDNAを挿入し、
改変するためのものであった。「インフェルノ」と名付けられたこのウイルスは、
1/3の割合で感染した人間を生殖不能にするものであり、
一時的に大量の人間を殺すウイルスであるより、恒久的に人口抑制の効果を発揮する
とゾブリストは考えたのであった。
◆ドクター・マルコーニの正体は?
大機構のメンバー、フェリスが変装していた姿。
ドクター・マルコーニを演じていた際、撃たれる振りをする際に失敗し、
胸を痛めた。
◆シエナ・ブルックスの正体は?
ベルトラン・ゾブリストの恋人であり、トランスヒューマニズム運動の
地下組織の一員。本名はフェリシティ・シエナ・ブルックスであり、
暗号名FS-2080は、イニシャルと百歳を迎える誕生日から取ったもの。
しかし、彼女は、ゾブリストが造り上げたウイルスの正体を知ると、
拡散を止めようとして、ゾブリストの居場所を探り、その死後は
ラングドンに協力したのだった。
コメントを残す