※この記事では、角川文庫版の下巻のみについて記述しています。
調べたくなる言葉
◆アレグザンダー・グレアム・ベル
1847年スコットランド・エディンバラ生まれの発明家で、
世界初の実用的な電話の発明で知られる。作中では、歴史的建造物が多い
フランクリン街区にある建物の例として、彼が1880年に初めて無線のメッセージを
発信したフランクリン・スクールが挙げられている。
◆ジェイムズ・スミソン
1765年フランス・パリ生まれのイギリス人科学者で、
死後に全財産をアメリカ合衆国に寄贈し、その遺産がスミソニアン協会設立の
基金となった。作中では、ピーター・ソロモンがフィリップ・エクセター・アカデミー
でスミソニアン協会会長として講演をした際に、彼を紹介した。
◆マヤ暦の「世界の終末」
メキシコやグアテマラなどの中央アメリカ各地の文明で使われていた暦で、
周期や日数が異なるいくつかの暦法が存在しており、それらの組み合わせによって、
1年260日、52年を1周期とするカレンダー・ラウンドと呼ばれる暦法となっている。
また、52年より長い期間を正確に記述するために、長期暦と呼ばれる暦も用いられる。
「世界の終末」とは、この長期暦が2012年12月21日から23日ごろに一つの区切り
を迎えることから広まったオカルト的な説。
◆映画「アビス」
1989年に公開されたアメリカのSF映画で、ジェームズ・キャメロン監督作品。
アカデミー視覚効果賞を受賞。未知の海溝アビス付近で行方不明となった原潜を
探すうちに、未知の生命体と遭遇するというストーリーだが、主人公が海溝へ潜る際に、
液体呼吸の技術が用いられる。
◆アケダーのナイフ
アケダーはヘブライ語で「縛り」を意味する。旧約聖書の創世記に記載されている、
アブラハムに神が与えた試練で、彼は一人息子のイサクをモリヤの山で生贄として
捧げるよう指示される。イサクを「縛り上げて」祭壇の上に置き、まさに刃を
息子に向けたところで神の使いが現れてそれを止めるという話。その際に、
使われかかった刃物がこのナイフであるとマラークは語る。
◆クリプトス
1945年、アメリカ・ワシントンD.C.生まれの彫刻家、ジム・サンボーンが、
1990年に作成した作品で、バージニア州ラングレーの中央情報局(CIA)本部に
置かれている。
「クリプトス」『フリー百科事典ウィキペディア日本語版』
2016年9月22日 8:34 (UTC) URL : https://ja.wikipedia.org
ストーリー上の謎、ネタバレ
◆ピーター・ソロモンの手が示すもの
マラークはピーターの右手首を切り取り、連邦議会議事堂のロタンダへ置いた。
その手の親指には王冠、人差し指には星、中指には太陽、薬指には角灯、
小指には鍵がそれぞれ指先に刺青されており、それは「神秘の手」と言われる
象徴を示しており、それは古来、秘伝の知恵を授ける古の正体の役割を持っている。
しかし、ピーターの手に残されていたのはそれだけではなく、
手のひらに「SBBⅩⅢ」とも書かれていた。
◆SBBXⅢとは
SBBは議事堂の地下二階(サブベースメント)を指し、その13号室のこと。
その部屋は、ピーター・ソロモンが借りており、フリーメイソンの
「自省の間」となっていたが、その奥には「高さ九インチぐらいの、硬い花崗岩を
削って造形」されたピラミッドが隠されていた。
◆石のピラミッドの謎(その1)
石のピラミッドには表面に「フリーメイソンの暗号」として知られる、
十六文字の記号が記されていた。それを解読したものが以下。
S O E U
A T U N
C S A S
V U N J
◆ピーターがラングドンに預けた金の冠石の謎(その1)
フリーメイソンのピラミッドは石のピラミッドの頂上に金の冠石があって初めて
完成する。その冠石をピーターは安全な隠し場所としてラングドンを選んでいた。
その表面には以下六語が彫られていた。
The
secret hides
within The Order
また、冠石が入っていた石の箱の底には「1514AD」と刻まれていた。
この文字列の意味は、ADはドイツの芸術家、アルブレヒト・デューラーを
示しており、1514は1514年に完成した「メランコリアⅠ」と言う作品に
隠した数字であった。
「メランコリアI」『フリー百科事典ウィキペディア日本語版』
2018年4月30日 21:20 (UTC) URL : https://ja.wikipedia.org
この作品の右上部分には、4×4の魔方陣が描かれており、制作年の1514年、
が埋め込まれているほか、縦横斜めの和が34になっているだけではなく、
右上、右下、左上、左下、真ん中のそれぞれの2×2の部分の和も34となる。
具体的には以下。
16 3 2 13
5 10 11 8
9 6 7 12
4 15 14 1
この並びに合わせて、石のピラミッドの暗号を並び替えると以下のようになる。
J E O V
A S A N
C T U S
U N U S
つまり、「Jeova Sanctus Unus」、「唯一にして真なる神」となる。
◆ピーターの指輪と石の箱の謎
冠石が入っていた箱の底はわずかに円形に盛り上がっており、
その中心だけがへこんでいる。これは、「サーカムバンクト(丸中黒)」を
意味しており、太陽や、万物を見透かす目など多くの含意をもつ重要な象徴。
また、ピーターの指輪の外側には小さな円が彫られており、
箱の突起に綺麗にはまるようになっている。はめた上で、三十三度回転させると
箱が展開される仕組みとなっていた。三十三度つまりthirty-third degreeは、
フリーメイソンの最高位である第三十三位階とダブルミーニングとなっていた。
展開後の図形は丸中黒を真ん中に置いた十字架であり、丸中黒は薔薇も示すことから
この十字は薔薇十字を示す。薔薇十字からは「古代神秘秘密結社薔薇十字会」が
連想されるが、その団員リストは欧州ルネッサンスの名士録と言えると
ラングドンは語る。(ベーコン、デカルト、パスカル、スピノザ、ニュートンなど)
以上の情報と「Jeova Sanctus Unus」を合わせて考えると一人の人物が浮かび上がる。
それは、「錬金術師で、ロンドン王立協会の会員で、薔薇十字団の一員で、
秘密めいた科学論文に偽名によって」「Jeova Sanctus Unus」と署名した人物。
その人物とは、「Jeova Sanctus Unus」を並び替えると現れる人物、
「Isacus Neutonuus」、アイザック・ニュートンである。
◆金の冠石の謎(その2)
アイザック・ニュートンというヒントからキャサリンは、ニュートンが考案した
温度計測法であるニュートン度を使うことを思いついた。
ニュートン度では水の沸点は三十三度であるため、キャサリンは鍋に湯を沸かし、
冠石を頂くピラミッドを沈める。キャサリンは錬金術でも多く使われた温度マーカー、
つまり、特定の温度で白熱発光する物質がピラミッドに塗られているのではと
考えた。そしてその考えは正しく、元々刻まれていた六語に加えて以下文字が現れた。
The
secret hides
within The Order
Eight Franklin Square
つまり、「フランクリン街区八番地」という言葉が新たに現れた、ように見えたが、
実は切るべきところはそこではなく、The Order Eight Franklin Square、
つまり、フランクリンのオーダー・エイト=八行八列の八方陣を示す。
フランクリンの八方陣とはベンジャミン・フランクリンが1769年に発表したもので、
「縦、横、そして、交差する対角線が作る四つのV字型の線上に並ぶ数の総和が
いずれも等しくなる、1から64までの数の配列」である。
◆石のピラミッドの謎(その2)
金の冠石に変化をもたらした煮沸は石のピラミッドにも変化をもたらした。
石のピラミッドは蝋でコーティングされており、それが熱で剥がれたことで、
底面に隠されていた精緻な彫刻が現れた。それは八行八列の八方陣になっており、
上記フランクリンの八方陣に基づいて並び替えることで、意味を成す。
一行目には「Heredom↓」(聖堂を意味するギリシャ語を語源に持つ言葉)が
現れ、それはフリーメイソンの間ではテンプル会堂を指している。
また、↓は下を指しているのではなく南を指している。つまり、
全体としてはテンプル会堂の南に聳え立つ、ワシントン記念塔を指す。
二行目の真ん中にはサーカムバンクト(丸中黒)が現れている。
三行目にはL(石工の定規)、Au(金)、∑(シグマ)、ピラミッド、
Δ(デルタ)、E(水銀を表す)、ウロボロス(己の尾を飲み込んでO字になっている蛇)
が現れている。これらはアルファベットに直すと、LAUSDEO、
「神を讃えよ」となるが、この文字列はワシントン記念塔の頂上に
「縦横わずか一インチの筆記体で彫りつけ」られている文字列である。
四行目以降には大きなピラミッドと、その下に伸びている階段の図が現れる。
つまり、彼らが一晩探し求めていた「失われしことば」は、
ワシントン記念塔の礎石、その中空となった部分に収められていることが、
これで明らかにされた。
◆マラークの正体とは?
マラークと名乗る青年は、本名をザカリー・ソロモンと言い、
ピーター・ソロモンの息子であった。ザカリーはトルコの監獄で死んだのではなく、
監獄の所長と組んで別の囚人を身代わりにし、その後、所長も殺して正体を
知るものをなくした。その後、ステロイドのせいで、声と体格が大きく変わった
姿でソロモン家を襲ったのだ。
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