「ロスト・シンボル」の謎・ネタバレ(2/3)

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※この記事では、角川文庫版の中巻のみについて記述しています。

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調べたくなる言葉

◆稀少な”アルミニウムの箔”

 アルミニウムは自然界では単体でほとんど存在せず、化合物として存在しているため、
金属としてその存在を知られたのは19世紀に入ってからと遅い。さらに、
自然界に大量に存在しているボーキサイトからアルミニウムを取り出すまでには、
一度アルミナという物質を経由しなければならず、大規模な工業生産が
可能となったのは1886年にフランスのポール・エルーと
アメリカのチャールズ・マーティン・ホールによる、アルミナからアルミニウムを
取り出す方法(ホール・エルー法)の開発と

1889年にオーストリア・ハンガリー帝国のカール・ヨーゼフ・バイヤーによる
ボーキサイトからアルミナを取り出す方法(バイヤー法)の開発以降である。
 そのため、作中でアメリカ連邦議事堂 議会図書館天窓の「パネルの枠には、
“稀少なアルミニウムの箔”――かつては金よりも珍重されていた金属の箔――が
施されている」と紹介されているように、この建物ができた19世紀前半の時点では、
アルミニウムを大量に精製する方法は無く、金よりも高価であった。

 

◆ベルニーニ

 ジャン・ロレンツォ・ベルニーニは、1598年現在のイタリアのナポリ生まれの
彫刻家、建築家にして画家。バロック芸術を代表する芸術家。時の教皇の元、
ローマの都市計画に携わり、市内に数多くの作品を残している。
 作中では、コンスタンティノ・ブルミディが手掛けた議事堂図書館の装飾が、
ルネッサンス建築の装飾表現の範囲にとどめつつ、近代的な啓蒙という主題を描こうと
したため、「階段の手すりには近代の科学者たちを表すキューピッド風の幼児たち
の像が彫られている」というような奇妙な取り合わせとなっており、
それをローマの市内に宗教的な作品を多く残した、ある意味大先輩である
ベルニーニの目にどう映るだろうかとラングドンは案じる。

 

◆ジョン・ホワイト・アレクザンダーによる<本の進化>

ジョン・ホワイト・アレクザンダーは、1856年アメリカ・ペンシルバニア州生まれの
画家、イラストレーター。肖像画家として成功し、マーク・トウェインなど
多くの著名人の肖像画を制作した。
 「本の進化」は、1896年の作品。


「John White Alexander」『Wikipedia, the free encyclopedia』より
The evlution of booksの内の一枚
16 December 2018, at 23:15 (UTC)  URL : https://en.wikipedia.org

 

◆オデュッセウスの航海

 オデュッセウスはギリシャ神話の英雄で、トロイア戦争勝利後に母国へ帰還するにあたり、
10年も「航海」を余儀なくされるが、その様子を描いたのがホメロスによる叙事詩、
「オデュッセイア」である。「航海」が10年にも及んだのは、
トロイア戦争で我が子を殺された海神ポセイドンの怒りによって、様々なトラブルが
発生したためである。作中ではフリーメイソンのピラミッドが人類に大いなる力を与える
と語るベラミーの話に納得できないラングドンが「オデュッセウスの航海に同行した一員
で無くてもキュプロクスが神話にすぎないことくらいはわかる」と語る。キュプロクスは、
単眼の巨人で、オデュッセウス一行は旅の途中でこの巨人に襲われる。

 

◆サン・ピエトロ・イン・ヴィンコリ教会の「角の生えたモーセ」

 サン・ピエトロ・イン・ヴェンコリ教会は、5世紀にローマに建てられた教会。
(その後、一度失われ、15世紀に再建された)
 サン・ピエトロは聖ペテロ(イエスの十二使徒の一人であり、初代ローマ教皇)、
ヴェンコリは鎖(ペテロがローマとパレスティナで捕らえられたときに使われた鎖)
を意味する。
 「角の生えたモーセ」は、ミケランジェロの作品で教皇ユリウス2世の
墓碑を飾っている。作中では、この像の悪魔めいた姿を見て、幼い頃のラングドンが
怖くなったことが述べられている。また、同じ個所で、そもそもモーセに角が生えていた
というのは、ヘブライ語の「出エジプト記」を翻訳者がラテン語訳する際に
「顔の肌が光を放っている」を「顔に角がある」と誤訳したためと述べられている。


「San Pietro in Vincoli」『Wikipedia, the free encyclopedia』
17 April 2019, at 22:54 (UTC)  URL : https://en.wikipedia.org

 

◆ユリイカ

 古代ギリシャ語に由来する感嘆詞で、何かを発見したことを喜ぶ際に使用される。
元々は、古代ギリシャの数学者アルキメデスが、浴槽に入った際に上昇した水位は
水に入った部分の彼の体積に等しいと気づいて発した言葉とされる。
 作中では、ピラミッドの最初の暗号を解いたラングドンだが、
解読された文字列を見て、意味が解らなかったため、
「”わかった!(ユリイカ)”」と叫ぶ気にはまったくならないと語る。

 

◆ヒンデンブルク号の炎上事故

 1937年5月6日、アメリカ・ニュージャージー州にあるレイクハースト海軍飛行場
で発生した爆発事故で乗員・乗客95名中35名と地上作業員1名が死亡した。
 原因は、外皮にたまった電気が発火し、浮揚ガスとして使われていた水素ガスが
大爆発を起こしたことによる。この事故によって、飛行船の時代に幕が閉じられた。
 作中では、マラークがキャサリン・ソロモンの研究室を爆破する際に、気体の水素は
「好都合なことに、液体のときよりもさらに可燃性が高い。ヒンデンブルク号の炎上事故
を思い出せ。」と語るシーンが登場する。

 

◆アレイスター・グロウリー

 1875年イギリス・ウォリックシャー州生まれのオカルティスト。
1904年にエジプトで霊的存在の幻聴を聞き、それをまとめた「法の書」を著し、
それを聖典とする宗教、哲学であるセレマを創設した。作中では、
「”人類史上最も邪悪”と教会から見なされた人物だった」とマラークが紹介し、
彼に大きな影響を人物である。

 

◆チチェン・イッツァのピラミッド

 現在のメキシコのユカタン半島にある、後古典期のマヤ文明の遺跡で、
ピラミッドは、マヤ文明の最高神ククルカン(アステカでのケツァルコアトルのこと)
を祀る遺跡。作中では、マヤ人はこのピラミッドの上で人間の首を切ったと
マラークが紹介する。


「チチェン・イッツァ」『フリー百科事典ウィキペディア日本語版』
2018年11月14日 4:14 (UTC)  URL : https://ja.wikipedia.org

 

◆ジョン・ミルトンの「失楽園」

 ジョン・ミルトンについては、「天使と悪魔」の記事参照。「失楽園」は、
旧約聖書の創世記を基にした叙事詩で、ヤハウェに敗れた堕天使ルシファーが
人間に嫉妬し、その策略によって人間は楽園を追放される。しかし、
罪を自覚した人間は追放を甘受し、楽園を去るといった場面が描かれている。
 作中では、この書物もまた、マラークに大きな影響を与えたものとして
描かれている。

 

◆アルバート・アインシュタイン

 1879年ドイツ生まれの理論物理学者。特殊相対性理論、一般相対性理論の他、
物理学の分野で多大な功績を残し、「現代物理学の父」と評され、
1921年のノーベル物理学賞を受賞している。作中では、
「われわれにはとうてい計り知れないものが実際に存在する。自然界の秘密の奥には、
謎めいてつかみどころがない、説明不能のものがいまだに残っている。理解の及ぶ
あらゆるものを超越したこの力に対する崇敬の念こそがわたしの宗教である」
という彼の言葉がキャサリン・ソロモンによって紹介されている。

 

以下、下巻へ続く。

 

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