「黒い家」の謎・ネタバレ

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調べたくなる言葉

◆LIBOR

 London Interbank  Offered Rate 略で、日本語ではロンドン銀行間取引金利と呼ばれる。
銀行間の取引の金利レートであり、特に短期金利は指標として使われることが多い。
ジャパン・プレミアムと共に、若槻が東京勤務時代になじみの深かった用語として、
恋人の黒沢恵によく話していたと作中で語られている。

 

◆ジャパン・プレミアム

 1990年代後半、日本の金融機関が、海外で資金調達をする際に上乗せされた
金利のこと。日本の金融機関が抱えていた多額の簿外債務※に対して、
海外の金融機関が不信感を抱いたことから発生した。
※)当時、日本の会計は取得原価主義であったため、実際の価格との間で差異が生じていた

 

◆アルカトラズ刑務所

 アメリカ・カリフォルニア州サンフランシスコ湾にあるアルカトラズ島にあった
刑務所のこと。1861年から刑務所として使われた。別名にザ・ロックなど。
作中では、若槻のアパートを黒沢がアルカトラズのようと表現した。

Alcatraz dawn 2005-01-07.jpg
「アルカトラズ島」『フリー百科事典ウィキペディア日本語版』
2019年2月27日 00:28 (UTC)  URL : https://ja.wikipedia.org

 

◆バカラックの「アー・ユー・ゼア・ウィズ・アナザー・ガール」

 バート・バカラックについては「アフターダーク」の記事参照。
「アー・ユー・ゼア・ウィズ・アナザー・ガール」は、1965年に
ディオンヌ・ワーウィックのために制作した楽曲。作中では、若槻がこの曲を
口笛で吹いたつもりだったが、鳥の鳴き真似にしか聞こえなかったという
エピソードが登場する。

 

◆ファーブルの「昆虫記」

 ジャン=アンリ・カジミール・ファーブルは、1823年フランス生まれの
博物学者。昆虫の行動研究の先駆者であり、コルシカ島、アヴィニョンなど、
暮らした土地での研究成果をまとめた「昆虫記」で知られる。
作中では、若槻の昆虫好きが「昆虫記」を読んでから、と紹介されている。

 

◆空谷の跫音

 「荘子」に見られる言葉で、「寂しい谷に聞こえる人の足音」という意味から
転じて、「寂しい暮らしを送っているところに、思いがけなく人が訪れたり、
嬉しい便りが来ること」という意味。作中では、朦朧とした意識の若槻が、
この言葉を想像させる足音を聞いたが、感情としては真逆の恐怖を感じている、
という場面が登場する。

 

◆キャノンデールのマウンテンバイク

 キャノンデールは、1971年にアメリカ・コネチカット州で創業された
自転車メーカー。社名はコネチカット州にある駅の名前から。
アメリカ国内での生産による高品質、高性能な製品を強みとしている。
作中では、若槻が通勤に使う自転車がこれだった。

 

◆南海ホークス

 1938年~1988年に存在した、大阪府を本拠地とするプロ野球チーム。
(1989年に福岡へ移転し、ダイエーホークス、2005年からはソフトバンクホークス)
作中では、若槻が菰田和也の生命保険の募集者に会いに行くために乗った、
南海電鉄高野線の車内から、南海ホークス身売り後、原形のまま住宅展示場に
されてしまった大阪球場が見えた。

 

◆丸の内のM生命や戦後GHQ司令部となったことでも有名なD生命の本社ビル

 M生命は、本社を千代田区丸の内2-1-1に置いていた三菱グループの
明治生命保険相互会社のことと思われる。(2004年に安田生命保険相互会社と
合併し、明治安田生命となっている)
 D生命は1945年から52年の間、GHQ庁舎として接収されていた、
第一生命株式会社のことと思われる。
作中では、若槻の母校の大学の校舎が、「内部の使い勝手より、外観のこけ威しを
優先させた」設計思想が、上記2社のビルを思い起こさせると若槻が思うシーンが登場。

 

◆梶井基次郎の「桜の樹の下には死体が埋まっている」

 梶井基次郎は、1901年大阪生まれの小説家。代表作「檸檬」のように、


感覚的なものと知的なものが融合した簡潔な描写と詩情豊かな澄明な文体

「梶井基次郎」『フリー百科事典ウィキペディア日本語版』
2019年2月28日 15:16 (UTC)  URL : https://ja.wikipedia.org

で、20編程度の短編を残した。
「桜の樹の下には死体が埋まっている」は、1928年に発表した短編小説、
「櫻の樹の下には」の有名な冒頭文。
作中では、醍醐教授がかつてカウンセリングをした異常な生徒のバウムテストが
本人曰くこの作品をイメージしたという、
木の根っこが死体に絡みついているようなものだった。

 

◆ヒッチコックの「サイコ」

 ヒッチコックについては、「青の炎」の記事参照。
「サイコ」は、1960年に制作されたサスペンス映画。母親を自ら殺めてしまった
罪の意識から、次第に母親の人格を自らの中に創り出していき、
ついには人格を乗っ取られてしまう青年が登場する。
作中では、金石が若槻にサイコパスという単語が知られるようになった時期に、
この映画で「サイコ」という単語が知られるようになったと語る。

 

◆レイチェル・カーソンの「沈黙の春」

 レイチェル・カーソンは、1907年アメリカ・ペンシルバニア州生まれの生物学者。
1農薬で使用されているDDTなどの化学物質の生物に対する危険性を
訴えた「沈黙の春」の著作で知られる。
作中では、金石が環境汚染がサイコパスを増やしているという仮説を語る中で、
カーソンと「沈黙の春」が登場する。

 

◆スミチオン

 フェニトロチオン(スミチオンは商品名)は、C9H12NO5PSで表される
薬品。住友化学が開発し、1961年の発売以降、殺虫剤として用いられている。
作中では、マツクイムシの防除のためと称してこの薬品が今でも撒かれており、
環境汚染が行われていると金石が話すシーンが登場する。

 

◆ピーター・ハミル

 1948年イギリス・ロンドン生まれのロック・ミュージシャン。
プログレッシブ・ロックを代表する人物の一人で、ソロ活動の他、
バンド、ヴァン・ダー・グラフ・ジェネレーターでの活動でも知られる。
代表作に、「Killer」「Refugees」など。
作中では、菰田重徳のせいで憂鬱だった6月24日の朝に、
若槻が聴いていたのが彼の曲だった。

 

◆「シャーロック・ホームズの事件簿」の中の「ソア橋」

 「シャーロック・ホームズの事件簿」については、「羊をめぐる冒険」の記事参照。
「ソア橋」は、作中で紹介されている「穀物商AM事件」を基に描かれた作品で、
同じように、橋の上で石に結び付けた拳銃で自殺し、その後拳銃が川の中へ
落ちることで凶器が失われ、他殺に見せかけるというトリックが使われる。
 穀物商AM事件では、自殺したのは破産に瀕したAM本人が保険金を得るためにだが、
「ソア橋」では、夫の愛が失われたと感じた妻が、夫の愛が移ったと考えた若い
住み込みの家庭教師に罪を着せるために、という違いがある。

 

ストーリー上の謎、ネタバレ

◆菰田和也が死亡した事件の真相は?

 当初、警察は自殺と判断し、若槻は継父の菰田重徳が自殺に見せかけて
殺したと考えていた。しかし、真相は重徳の妻、菰田幸子が犯人。
 事件の流れは、以下の通り。
 幸子は、和也に掛けた保険金が自殺でも支払われるのかを事前に電話で確認。
その際、電話に出た若槻は、幸子自身が自殺しようとしていると勘違いをし、
自分の兄の話をし、自殺を思い止まる様話す。幸子はお人好しの若槻を
利用しようと考え、和也の死体の第一発見者に仕立て上げた。

 その後、保険金が中々支払われないと、若槻の部屋へ無言電話を入れるなど
嫌がらせを実施。重徳の事件の際には、それがエスカレートし、
恋人の黒沢を拉致し、さらには若槻の留守中に部屋へ侵入し、若槻を殺そうとした。

 

◆菰田幸子とはどういう人物なのか?

作中で、夢分析が行われた結果、昔の有名な大量殺人者のものと同じく、
「この人間には、心が無い」と判断されていた。
その通り、子供の頃には学校で飼っていた小動物や、気に入らない人間を手にかけ、
長じてからは、かつての夫、白川や、白川との息子・義男、
重徳に接近した金石や、保険解除を強要してきた三善、外務員の高倉他、
数えきれない殺人を犯している。
 最後は、昭和生命の支社ビルに侵入し、若槻を殺そうとしたところを
逆に消火器で頭を砕かれて死亡。

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