「暗黒館の殺人」の謎・ネタバレ(1/4)

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※この記事では、講談社文庫版の1巻のみについて記述しています。
 2巻についての記事はこちら
 3巻についての記事はこちら
   4巻についての記事はこちら

 

調べたくなる言葉

◆色黒のメフィストフェレス

 メフィストフェレスは15~16世紀の錬金術師、ファウスト博士が
呼び出した悪魔とされ、ゲーテの「ファウスト」他多くの文学作品の題材となっている。
その風貌は様々に描かれるが
、河南が思い描いたのは、
ひょろりと細長い体躯というところから、以下のような感じか。


Paul Matheyによる作品「Portrait of an Unidentified Man as Mephistopheles」
URL https://artuk.org/discover/artworks/portrait-of-an-unidentified-man-as-mephistopheles-215871

 

◆ソ連のクーデター騒ぎ

 1991年8月に発生したソ連8月クーデターのこと。
改革派のソ連邦大統領、ミハエル・ゴルバチョフに対して、
守旧派の副大統領、ゲンナジー・ヤナーエフらが起こしたクーデター。
ロシア共和国大統領、ボリス・エリツィンらの抵抗により失敗に終わった。
この事件をきっかけに、共産党の権威が失墜。
1991年12月25日、ソ連邦消滅に至った。

 

◆フランシス・コッポラの「ドラキュラ」

 ブラム・ストーカーの「吸血鬼ドラキュラ」を原作とする、
1992年公開のアメリカ映画。
ドラキュラ伯爵をゲイリー・オールドマンが、ヒロインのミナをウィノナ・ライダーが、
吸血鬼研究者のヴァン・ヘルシング教授をアンソニー・ホプキンスが演じた。
1993年のアカデミー賞で、衣装デザイン賞など3賞を受賞。
フランシス・コッポラは1939年アメリカ・デトロイト生まれの映画監督、脚本家など。
代表作に「ゴッドファーザー」シリーズや、「地獄の黙示録」などがある。

 

◆中也君

 主人公である青年のあだ名。1907年山口生まれの詩人、中原中也から。
玄児の好きな詩人と思われ、作中でも「昏睡」(亡びてしまつたのは~」)、
「サーカス」(ゆあーん、ゆよーん、ゆやゆよん)、などの作品や、
「山羊の歌」「在りし日の歌」などの作品集が登場する。
また、黒塗りの暗黒館に住み、自身も黒づくめの服装が多い玄児にとって、
同じく黒いソフト帽、黒い背広、黒い外套など黒づくめの服装を
トレードマークとしてた中也は、その点でも思い入れのある存在だったと思われる。

「私」も開き直りで黒いソフト帽を愛用していたりするという記述があるが、
おそらく有名な以下写真をイメージしての行動だろう。

File:Nakahara Chuya.jpg
「中原中也」『フリー百科事典ウィキペディア日本語版』
2018年9月9日 01:54 (UTC)  URL : https://ja.wikipedia.org

 

◆ジュリアン・ニコロディ

 「黒猫館の殺人」で初登場(記事はこちら)した架空の人物で、イタリアの建築家。
今作では、玄遥がイタリア滞在中に見たニコロディ設計の建物から刺激を受け、
暗黒館建造時にそのまま手本にしてないにせよ、念頭に置いていたとされる。

 

◆旧古河男爵邸

 4月20日、中也が玄児の自転車にひかれる直前に訪れていた場所。
1919年、古河虎之助男爵の邸宅として、ジョサイア・コンドルの設計で建設された。
現在も東京都北区に現存し、都立公園となっている。
作中では、「北方ゴシックの趣を備えた重厚な石造りの洋館」と紹介。

Kyu-Furukawa Tei (House)2.jpg
「旧古河庭園」『フリー百科事典ウィキペディア日本語版』
2018年8月13日 05:57 (UTC)  URL : https://ja.wikipedia.org

 

◆ジョサイア・コンドル

 1852年イギリス・ロンドン生まれの建築家。
1877年、お雇い外国人として来日し、現在の東京大学工学部教授となる。
(以後、1920年の死去まで日本で過ごした)
主な作品として、鹿鳴館や三菱一号館など。

Rokumeikan.jpg
「鹿鳴館」『フリー百科事典ウィキペディア日本語版』
2018年9月15日 01:04 (UTC)  URL : https://ja.wikipedia.org

 

◆くる病

 ビタミンD欠乏や、代謝異常によって骨が石灰化する病気。
作中の蛭山丈男のような、脊椎や骨の湾曲といった症状がみられる。

 

◆「糸玉の一つも用意してくるんでした」

 玄児の暗黒館を指しての冗談、
「恐ろしい怪物が潜んでいるかもしれないぜ。頭が牛で、人を喰う」
を受けての中也の返答。
頭が牛の怪物は、ギリシャ神話に登場するミノタウロスのこと。
暗黒館をミノタウロスが閉じ込められている迷宮になぞらえた玄児に対し、
ミノタウロスを倒した英雄テセウスが迷宮からの脱出に使ったように、
糸玉を持ってくればよかったと中也が返したもの。
こちらの「迷路館の殺人」の記事中「アリアドネの糸玉」も参照ください)

 

◆二笑亭

 暗黒館で行き止まりの階段を見つけた中也が思い浮かべた建物。
東京・深川にかつて実在した建物で、「昇れない梯子、使えない押入」など、
常軌を逸した造作が詰まっていた。
「黒猫館の殺人」においても紹介された。(こちらの記事参照)

 

◆ダイダラボッチ、大人弥五郎

 ダイダラボッチは、日本各地で伝承される巨人で、山や湖沼を造ったと
伝えられることが多い。
大人弥五郎(おおひと やごろう)は、宮崎県と鹿児島県の南九州に伝わる巨人。
ダイダラボッチと同じく、山ほどもある巨人だとされる。
鹿児島県曾於市や宮崎県都城市、日南市では彼の名を冠した祭りも行われている。

 

◆山海経

 古代中国の戦国時代から漢代(紀元前4世紀~3世紀)にかけての成立とされる地理書。
主要な山系ごとに、各地の産物、動植物、河川、神霊などが記述されている。
作中であるように、本書物で人魚について、四つ足(サンショウウオに似る)で
赤ん坊みたいな声を出すという記述がある。

 

◆エリック・サティ

 エリック・アルフレッド・レスリ・サティは、1866年フランス生まれの作曲家。
奇抜な言動で異端児扱いされたが、西洋音楽の世界に革新的な技法を持ち込んだ。
残した作品には、ピアノ曲を多く残したが、作中で美魚が言っている通り、
「おかしな題名ばっかり」なことで知られる。
代表曲は、「グノシェンヌ」「ジムノペディ」「梨の形をした三つの小品」など。

 

◆サティと中原中也はダダ仲間

 美鳥、美魚の二人から中也がサティを好きだと聞かされた玄児が叩いた軽口。
ダダ=ダダイズムは1910年代半ばに起こった芸術運動。
第一次世界大戦への反発から、既存の価値観を否定したところに特徴がある。
中原中也、エリック・サティともにダダイムズ的要素のある芸術家とされる。

 

◆ソ連の平和共存路線と中ソ対立の深刻化

 スターリンの死後、ソ連共産党の指導者となったフルシチョフが、
平和共存路線を打ち出したのは、1956年の第20回のソ連共産党大会でのこと。
また、中ソ対立が始まったのも同じソ連共産党大会でのスターリン批判がきっかけ。

◆宮垣杳太郎

 架空の作家で、作中では探偵小説の大家とされる。
「迷路館の殺人」にて、舞台となった迷路館の所有者であり、
事件においても大きな役割を演じ、そして、事件中に亡くなった。

 

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<第二巻>

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