「時計館の殺人」の謎・ネタバレ

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調べたくなる言葉

◆作品の舞台

 
時計館の所在地について、作中に以下のような記載がある。
「問題の屋敷は鎌倉市の北東部、白山神社や散在が池で知られる今泉の町外れにあった」
地図上のマークは散在が池だが、おおよそこの辺りではなかろうか。

 

◆悪魔の折り紙他

 本作では、改良版・悪魔(指が7本)、ステゴザウルス、砂時計、
後脚のあるオタマジャクシ、三つ首の鶴、魚、巻き貝、ダビデの星、かぶと虫等、
多くの折り紙作品が登場する。
全てではないが、多くが「迷路館の殺人」の記事でも紹介した、

本格折り紙―入門から上級まで(前川淳 著)に掲載されている。

 

◆幼年期の終わり

 イギリスの作家、アーサー・C・クラークが1953年に発表した長編SF小説。
20世紀後半のある日、地球の上空に宇宙人が現れ、地球人を支配するところから始まる。

『オーバーロード』(上帝)とは、その宇宙人の呼び名。
その姿は―作中で既にバラされているので、気にせずバラすと―、
いわゆる「悪魔」の姿をしている。

 

◆エクトプラズム

 フランスの生理学者シャルル・ロベール・リシェにより、1893年に造られた言葉。
語源は、ギリシャ語でecto=外の、plasm=物質。
この言葉はスピリチュアリズムで用いられ、その意味は、日本大百科全書(ニッポニカ)
によると以下の通り。

物理的心霊現象をおこす霊媒の体から出るといわれる物質様のもの

 エクトプラズムを対外に出すことができるのは一部の霊能者だけとされる。
その際、口から出る場合もあれば、鼻、耳からも出る場合がある。

 

◆フォックス姉妹

 19世紀アメリカの霊能者姉妹。スピリチュアリズムが盛り上がるきっかけを作った。
フォックス家は、ニューヨーク州ハイズビルの自宅で、毎夜発生するラップ音に
悩まされていたが、ある時、姉妹がこの音の主と交信できることを発見。
その家で過去に殺された行商人の男の霊が、音の原因であることを突き止め、
さらに、彼は地下室に埋められているという情報まで引き出すことに成功。
(ただし、直後に行われた発掘では、人骨は見つかったものの、
人一人分には不十分な量であった)
このことをきっかけとして、フォックス姉妹は一大センセーションを巻き起こし、
全米での交霊会に引っ張りだことなった。
その後、一度はインチキであることを告白したが
(作中で述べられているように、関節の音を出してラップ音に見せかけていた)、
直ぐに告白自体を撤回。

 姉妹の死後、1904年になってハイズビルの家から、彼女らの交霊の通り、
一体の人骨と行商用の箱が発見された。

インチキだったのか、本物だったのか、真相は今となっては誰にもわからない。

 

◆江南が見た記憶がある大学時代の同輩

 瓜生という青年、オカルト関係に限らず、かなり広範な分野にわたって
豊富な知識を持っているようである。
よく似たキャラクターをどこかで見たことがあるな、と江南は思う。
少し考えて、誰だか分った。
大学時代、推理小説研究会に所属していた時分の同輩に、
あんな男がいたっけ……。

 十角館の殺人に登場した、エラリイこと松浦純也のことを指すと考えられる。
当時、K**大学法学部の三回生で、江南と同学年。
博識な人物で、十角館では探偵役のポジションにいたが……

 

◆フリーメイソンの三角時計

 フリーメイソンのシンボルである三角形を意匠に使用した時計のこと。
フリーメイソンは、16~17世紀に石工のギルドから出発した秘密結社。
そのシンボルは上向きの三角形(コンパス)と、下向きの三角形(直角定規)を
組み合わせ、真ん中に「G」の文字をあしらった意匠。
コンパスと直角定規は、石工が使用する道具から、
Gの文字は、至高存在を意味し、神(God)、幾何学(Geometry)、栄光(Glory)、
寛容(Grandeur)、黄金(Gold)、知識(Gnosis)の意味が込められている。

「フリーメイソン」『フリー百科事典ウィキペディア日本語版』
2018年8月21日 03:31 (UTC)  URL : https://ja.wikipedia.org

 

◆ジョン・ソール

 1942年生まれ、アメリカ・カリフォルニア州出身のホラー小説家。
幼児虐待をテーマにした作品が多い。確かに暗い趣味と言えるかもしれない。
代表作に「暗い森の少女」「悪魔は地下室で歌う」
「ブラックストーン・クロニクル」など。

 

◆幻影城

 1975年から79年にかけて発行されていた探偵小説専門雑誌。
雑誌名は江戸川乱歩の同名の探偵小説評論集に由来。
本誌から世に出た作家に、泡坂妻夫、栗本薫、田中芳樹、連城三紀彦らがいる。
このメンバーを見るに、探偵小説専門と言いつつも、
少なくともSF分野の作家にも門戸を開いていた雑誌のようである。

 

◆ヴェネチアの仮面

 ヴェネチアのカーニバルや、仮面舞踏会で用いられる仮面。
目の周りのみを覆うタイプや、顔全体を覆うタイプなどの種類がある。


「ヴェネツィア・カーニバル」『フリー百科事典ウィキペディア日本語版』
2017年12月2日 12:42 (UTC)  URL : https://ja.wikipedia.org

 

◆チェシャ猫

 ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」に登場する猫。
常ににやにやと笑いを浮かべており、人の言葉を話し、

姿を自由に現わしたり、消したりできる。

 

◆ア・プリオリ

 経験的認識に先立つ先天的、自明的な認識や概念のこと。

 

◆エドガー・アラン・ポウが書いた有名な恐怖小説

 1843年に発表された「落とし穴と振り子」のことと思われる。
作中では、犯人に殴られ気絶していた江南が暗闇の中を壁伝いに歩くシーンがあるが、
落とし穴と振り子では、スペインの異端審問で有罪とされた男が、
真っ暗な地下牢の中を手探りする描写がある。

 

ストーリー上の謎、ネタバレ

◆時計館の存在目的とは?

 16歳まで生きられないと予言されていた古峨永遠の、
16歳の誕生日に花嫁になるという夢を叶えるために建てられた。
時計館の中にある時計は全て外の世界の1.2倍の速さ、
つまり外の1時間=中の50分で動いている。
そうすれば、その中で暮らしている永遠は、
実際より1年早く16歳を迎えることができるはずだった。

◆なぜ永遠は自殺したのか?

 時計館時間での16歳を迎える直前、偶然出会った瓜生らとの会話から、
真実を知ってしまった。そして、なぜ周囲の人間が、
自分を騙し続けたのか考えた彼女は、
自分が本当の16歳の誕生日までは生きられないから
なのだという考えに至り、絶望したため。

 

◆倫典が残した詩の意味は?

女神が沈黙の獄舎につながれている …①
一九九二年八月五日 処刑の日 …②
時間は果て 聖堂に七色の光射し …③
血を揺るがす叫びの中にお前たちは聴くだろう …④
沈黙の女神の ただ一度の歌声 …⑤
美しき断末魔の調べを …⑥
それは嘆きの歌 それは祈りの歌 …⑦
罪深き獣たちの骸とともに …⑧
我らの墓標に捧げられるであろう …⑨

①女神とは時計塔に取り付けられている鐘のこと。
 鳴らすための紐に繋がっていない=沈黙の獄舎に繋がれているということ。

②一九九二年八月五日は時計館旧館内時間でのこと。
 外の時間では一九八九年八月五日。

③決められた時間が来て、二枚の色ガラスの間に挟まれていた砂の層が抜け落ち、
 色ガラスが直接外光を受けて輝く様を指す。

④~⑦ ③の後に訪れた時計塔崩壊の中で、鐘が鳴る様を指す。

⑧時計塔に部屋を与えられていた野々宮と由季弥のこと。
二人が時計塔の崩壊によって死亡することを想定していたと考えられる。 
野々宮は不吉な占いをしたためと考えられる。
由季弥はずっとお姉さんを守るために生まれてきたのだと言いつけて育ててきたのに、
結局守れなかったからだろうか。

⑨時計塔が納骨堂の方角に倒れたことを指す。

 

<次回作>

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