調べたくなる言葉
◆折木供恵の旅行先
①ベナレス(インド)
②ニュー・デリー(インド)
③ベイルート(レバノン)
④イスタンブール(トルコ)
⑤プリシュティナ(コソボ)
⑥サラエヴォ(ボスニア・ヘルツェゴヴィナ)
◆グロースターター
スターター形の蛍光灯を点灯するために用いられる放電管。点灯管とも。
蛍光灯を点灯するためには、蛍光灯内の電極を加熱する必要があるが、
そのための熱を供給するのがグロースターター。
(蛍光灯のスイッチを入れたときに、本体が点灯する前に、薄紫色に光る
小さな管があればそれである)
電子式の点灯管に置き換わったり、蛍光灯自体がLEDに置き換わったりして、
見られなくなってきている。
◆野点
野外で行われる茶会のこと。
豊臣秀吉が1587年に北野天満宮で催した北野大茶湯は歴史上有名。
作中では、神高文化祭の野点は、この街で茶道を修めんとする高校生なら
一度は参加すべきと言われるほど大したものらしい。
◆ブレイクダンス
1970年代のアメリカ・ニューヨークで発達したストリートダンスの一種であり、
ヒップホップ文化の一要素。
ギャング同士の暴力的な抗争の代わりに、ブレイクダンスの「バトル」※が、
用いられるようになったことで発展したとされる。
そのため、ブレイクダンスの競技会では、バトル形式が多く用いられている。
作中では、神高文化祭のコンテストからはプロのバックダンサーを輩出したとされる。
※)ブレイクダンスのバトルとは、一対一あるいは多対多で、
交互にダンスを見せ合うことを言う。
◆トートロジー
同語反復などと訳され、同語や同義語、類語などを反復させる修辞技法。
作中では、「結果を目的にすればそれを目的にして結果を作ろうとする」という
千反田の発言を、折木がトートロジーだよな?と考えるシーンが登場する。
◆南総里見八犬伝
1814年から1842年にかけて刊行された全106冊からなる滝沢馬琴の長編読本。
没落した安房の里見家を、名前に「犬」の文字を持つ八犬士が再興するというあらすじ。
作中では、古典部の文集が、「『南総里見八犬伝』読破録」みたいなものだったら
覚悟がいると、折木が考えるシーンがあるが、この長さを考えると尤もである。
◆雨月物語
1776年に出版された、上田秋成による全九編からなる怪異小説。
作中で、折木がこういう文集だったら覚悟がいる、と考えていた例の一つに
「『雨月物語』”白峰”における天皇観」があるが、
白峰とは、九編のうちの一つで、讃岐を訪れた西行が、保元の乱で流された
崇徳院の墓を訪ねるという話。そこで、西行は院の幽霊に出会い、
天皇の在り方について議論を戦わせる。これを文集で論じようとすると
非常にややこしい。
◆大鏡
大鏡は、平安後期に成立した紀伝体の歴史書。
850年から1025年までの宮廷の歴史を、大宅世継と夏山繁樹という、共に200歳近い
老人が語り合うという形式。作中では、南総里見八犬伝、雨月物語と同じく、
覚悟がいる文集の例として、
「『大鏡』に見る社会規範の変遷に関する前年の考察に対する反論」が挙げられたが、
これはもう、大鏡関係なくタイトルからして覚悟が要りそうだ。
◆あの日の城門の鍵
イスタンブールからの折木供恵の手紙で、「この街でタイムマシーンが手に入ったら、
是非あの日の城門の鍵を掛けに行きたいわ。歴史が変わるかな。」とある。
「あの日」とは、1453年5月29日のこと。この日、オスマン帝国メフメト2世により、
ビザンツ帝国の首都コンスタンティノープル(現在のイスタンブール)が陥落した。
かねてから、コンスタンティノープルは陸からも海からもオスマン帝国に
包囲されていたが、総攻撃が行われたこの日、
城門の通用門の一つが施錠されておらず、そこからオスマン帝国軍の侵入を許し、
コンスタンティノープル陥落に繋がった。
◆インテリゲンチャ
知識人、知識階級を意味するロシア語。
◆ルビコン川を渡る
ルビコン川は、現在の地名で北イタリアのリミニとラヴェンナの間を流れていた川。
イタリア本国と属州との境界線になっていた。
当時の法で、軍団を率いてこの川を越えることは禁止されていた。
破ることは共和国への反逆とみなされていた。
結局、カエサルは軍団を率いてこの川を渡り、元老院との対決姿勢を明確にする。
この故事から、「ルビコン川を渡る」という言葉は、
後戻りできない重大な決断、判断を意味している。
◆寺とかミューとかナンバーズとか
作中で、伊原の文集原稿が表記のような言葉で表される古典的名作への
思い入れを述べたものとされている。
その古典的名作は、おそらくは、竹宮恵子によるSF漫画、「地球へ…(テラへ)」
のことと思われる。月刊マンガ少年に1977年から1980年まで連載された。
遥か未来の世界で、超能力を持つ新人類「ミュウ」と、
彼らを排除しようとする体制側=執行機関「メンバーズ・エリート」との
戦いを描いた作品。
◆ゼノンのパラドックス
ゼノンは古代ギリシャの哲学者。ゼノンのパラドックスとは、
彼が提起した議論全体の総称。個別の議論としては、
「アキレスと亀」、「飛ぶ矢」などが著名。
「アキレスと亀」とは、次のような議論。アキレスと亀が徒競走をすることになった。
しかし、アキレスの方が速いのは明白なので、亀はハンデをもらい、
前方A地点からスタートすることになった。競争開始後、アキレスがA地点に到着すると、
その掛かった時間分、亀は前に進んでいることになる(B地点)。
アキレスがB地点に到着したときには、亀はさらに前方のC地点に到達している。
これを繰り返すと、いつまで経ってもアキレスは亀に追いつけないことになってしまう、
というパラドックス。
「飛ぶ矢」は次の通り。飛んでいる矢の一瞬を捉えると、矢は止まっている。
どの瞬間を切り取っても矢が止まっているならば、常に止まっていることになり、
矢は動いていないことになってしまうというパラドックス。
作中では、古典部文集の福部の原稿が、これに関するジョークだったらしい。
ストーリー上の謎、ネタバレ
◆千反田が部室に閉じ込められていた理由は?
折木と千反田が出会ったときのエピソード。
千反田は鍵の開いていた部室に入った。その数分後に折木が鍵を開けて部室に入った。
鍵は室内からは掛けられない構造になっていて、
つまりは千反田はいつの間にか閉じ込められていた。それは何故か。
答えは折木が4階の部室に行く途中、3階で見た脚立を持った用務員にあった。
千反田が気付いた足元からの音=3階の天井から物音は、
用務員がグロースターターか火災報知器の点検をしている音で、
彼は、一つのフロアを一気に点検し、終わるとマスターキーで施錠していた。
つまり、千反田は点検が終わったあとの部室に入り、その後施錠されたのだ。
◆折木は壁新聞部の遠垣内に何をしたのか?
古典部文集を探して壁新聞部部室へ行った古典部一行だったが、
金庫に入っているはずの文集どころか、金庫そのものが見つからなかった。
しかし、折木と壁新聞部長・遠垣内の会話ののち、文集は古典部室へ届けられていた。
どういうことだったのだろうか。
遠垣内は部室手前の廊下に赤外線センサーを設置し、部室に鍵をかけ、
来客がくると窓を明け、扇風機を最強にし、デオドラントに気を使っていた。
彼は何をしていたのか。煙草を吸っていた。そして喫煙道具一式を段ボールで
カムフラージュした金庫の中に隠していた。折木はそれに気づき、
金庫の中にある文集を渡してくれるなら、煙草の件は見て見ぬふりをする。
さもなくば……と遠垣内を脅したのだ。
◆カンヤ祭の意味とは?なぜ古典部ではカンヤ際という呼び方はタブー?
カンヤ祭は神山高校文化祭の俗称だが、神高祭がなまった名前ではなく、
千反田の伯父であり、三十三年前の生徒vs学校闘争時のリーダー「関谷純」の、
苗字を音読みしたもの。では何故タブーなのか。
関谷純は、文化祭の伝統を守った英雄として祭り上げられたが、
決しての自ら望んだわけではなく、挙句、退学の憂き目にあっている。
だから、彼の所属していた古典部のメンバーにとっては、タブーなのだ。
◆タイトル「氷菓」の意味は?
「氷菓」は関谷が退学前に名付けていった古典部文集の名前。
氷菓は英語でアイスクリーム(icecream)⇒アイ スクリーム(I scream)、
つまり、彼の悲痛な叫びを意味していたということになる。
<続編>
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