「遠まわりする雛」の謎・ネタバレ

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調べたくなる言葉

◆ピアノソナタ「月光」

 神山高校にあった七不思議その二で、放課後の無人の音楽室から流れてくる
音楽がこの曲。
ドイツの作曲家、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンが1801年に作曲した
ピアノソナタ14番の通称。
ベートーヴェンの三大ピアノソナタの一つ。残り二つは「熱情」「悲愴」

 

◆アース・ウィンド&ファイアー

 1969年アメリカで結成されたアフリカ系アメリカ人のファンクミュージック・バンド。
1970年代を代表するバンドで代表曲に「シャイニング・スター」「セプテンバー」
などがあり、グラミー賞を6回受賞しているビッググループだが、
福部と折木が鏑矢中のアース・ウィンド&ファイアーなのかはよく分からない。
デュオではないが、ツインボーカルだからか?

 

◆春秋戦国時代

 古代中国の時代区分の一つ。紀元前770年に周王朝が東西に分裂してから、
紀元前221年に秦が統一するまでの約550年間を指す。
春秋の名は、儒教の経典「春秋」から。前半は春秋時代、後半は戦国時代という。
厳しい時代の中で諸子百家と呼ばれる優れた思想家を多数輩出した。

 

◆合従連衡策

 戦国時代、列国の中で飛びぬけて強大になりつつあった秦に対抗するため、
周辺六国(韓、魏、趙、燕、楚、斉)は互いに結んだ。これを合従策という。
一方で、秦は各国と個別に同盟を持ち掛け、六国の同盟を切り崩した。
これを連衡策という。結果、秦は連衡策によって、六国全てを滅ぼし統一を成し遂げた。
合従策も連衡策も、共に縦横家と呼ばれる思想家によって、唱えられた。
縦横家とは、各国を行き来して外交を行っていた思想家のことをいう。
合従策を訴えた代表的な人物に蘇秦、連衡策の代表的人物に張儀が挙げられる。

 

◆妖怪が神山高校を徘徊している、省エネ主義という妖怪が!

 冗談で、「疲れることはしたくありません」と言った千反田に対して、
福部が言った言葉。1848年に、カール・マルクスとフリードリヒ・エンゲルスが
著した「共産党宣言」中の有名な一節、「一匹の妖怪がヨーロッパを徘徊している。
共産主義という妖怪が」のパロディと思われる。

 

◆ネッシー

 イギリス・スコットランドにあるネス湖で目撃されたとする、未確認生物。
首長竜プレシオサウルスのような姿で報告されることが多い。

 

◆コックピット型の黒い筐体のロボット同士の戦闘をシミュレートするゲーム

 作中で、福部と折木がゲームセンターで対戦したゲーム。
かつてセガが発売していたアーケードゲーム「電脳戦機バーチャロン」と思われる。
そして二人が使用していた機体は、福部が以下特徴から、「バイパーⅡ」と思われる

「空中戦を得意とする機動性重視のものだった。細身のフォルム、右手に内蔵された
機関砲。ボディからはビーム砲が突き出している

以下amazonリンク画像が「バイパーⅡ」

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一方、折木の機体は以下作中の記述から、「ライデン」と思われる。

大艦巨砲主義の期待を選んだ。重心の低そうなどっしりした外見で、
右手に滑腔砲を握り、両肩にレーザー砲を担いでいる

以下amazonリンク画像が「ライデン」

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◆一筒撈月(イーピンラオユエ)

 中国のルールに由来する古役(現在のルールでは適用されない古い役)。
海底(はいてい…最後の牌)で引いたツモ上がり牌がイーピンだった場合に
成立する役。イーピンを月に見立て、海底に沈んだ月を掬い上げるという意味。
ただし、役満ではなく、満貫。

 

◆コートドール

 1883年に発売されたベルギーのチョコレート。
名前の意味は、カカオの産地である「黄金海岸」(現在のガーナ)から。
作中では、伊原が福部に贈ろうとしたバレンタインチョコの材料に使われた。

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◆マチュ・ピチュ

ペルーにある15世紀のインカ帝国の遺跡。標高2,430mの急峻な山の尾根に
位置していて、山裾からは確認できないため、1911年にアメリカの
探検家ハイラム・ビンガムに発見するまでその存在は忘れ去られていた。

「マチュ・ピチュ」『フリー百科事典ウィキペディア日本語版』
2018年11月23日 5:25 (UTC)  URL : https://ja.wikipedia.org

 

◆トンプソンマシンガン

 トンプソン・サブマシンガンは、1921年にアメリカ合衆国で開発された短機関銃。
頑丈で信頼性にも優れていることから、現在に至るまで170万挺以上が生産されている。
作中では、折木のトレンチコートにこの銃を隠していそうと福部が評した。

Submachine gun M1928 Thompson.jpg
「トンプソン・サブマシンガン」『フリー百科事典ウィキペディア日本語版』
2018年10月26日 2:10 (UTC)  URL : https://ja.wikipedia.org

 

◆石川五右衛門「絶景かな、絶景かな。春の眺めは値千金とはちいせえ、ちいせえ」

 石川五右衛門は安土桃山時代の盗賊。文禄三年(1594年)に捕らえられ、
釜茹でにより処刑された。江戸時代にフィクションの主役として多く用いられたことで、
現在に至るまで高い知名度がある。
「絶景かな~」は、「この五右衛門には値万両」と続く。
歌舞伎狂言「楼門五三桐」で五右衛門が、南禅寺の山門の上から、
桜を愛でながら言う台詞。

 

ストーリー上の謎、ネタバレ

◆各短編の時系列

・やるべきことなら手短に…4月末(作中で、「四月もそろそろ終わりだ」)
・大罪を犯す…6月(作中で、「頃は六月、梅雨の晴れ間」)
・正体見たり…8月(作中で、「残暑未だ厳しい八月」)
・心あたりのある者は…11月1日(作中で、「十一月の、一日です」)
・あきましておめでとう…1月1日(作中で「元旦にやっていたことは…」)
・手作りチョコレート事件…2月14日
・遠まわりする雛…折木ら2年生の4月

ちなみに、既刊作品の時期は以下。
・「氷菓」…4月~10月
・「愚者のエンドロール」…8月末~9月上旬
・「クドリャフカの順番」…10/3~10/6

◆「やるべきことなら手短に」の謎・ネタバレ

■神山高校にもあった七不思議 その二

 ピアニストのいないピアノから月光が流れた謎、目を血走らせた女生徒の謎は、
眠かったピアノ部員が、18時前にCDの目覚ましタイマーをセットし寝ていた。
セットしたCDは「月光」で、目撃者が入ってきたときに、
目が血走っていたのは寝起きだったから。

 

■神山高校にもあった七不思議 その一

 神山高校には女郎蜘蛛の会という秘密倶楽部が存在するらしい。
彼らは、多数の勧誘ポスターの中に自分たちの勧誘メモを紛れ込ませ、
密かに新入生を勧誘しているらしい。ここまでは、
総務委員の福部が語ったことで、事実。そのあと、昇降口前の掲示板で、
実際にメモが見つかったのは折木の仕業。折木は早く帰りたかったため、
昇降口前の掲示板に千反田を誘導し、そこで、謎を解決(=勧誘メモを発見する)
することで、やらなければならないこと(=千反田を納得させること)を
手短にやったつもりだった。

 

■「音楽室まで足を延ばしていたほうが、長い目で見れば、
ホータローのモットーに
かなうことになったんじゃないか」
とはどういう意味?

 折木は、実は、早く帰りたいために千反田を煙に巻くようなことをしたのではなく、
千反田の「わたし気になります」の目に、灰色の学生生活が彩られようとされている
ことに対して、心の準備が出来ておらず、状況を「保留」するために、策を弄したのだ。
そのことは、やるべきことは手短にというモットーには全く適っていなかった。
そこを福部が指摘した言葉。

 

◆「大罪を犯す」の謎・ネタバレ

■尾道の間違いとは?

 尾道は、担任している各クラスの進度を教科書にメモして確認している。
にも関わらず、千反田の1年A組と、進度が速かった1年D組とを間違え、
A組の生徒が習っていないことを質問し、解答できなかったので怒った。
進度の認識を誤った理由は、尾道が教科書にメモする際、
小文字で「a」「d」と書いたため、見間違えた。尾道が、小文字でメモをしていた
理由は数学教師にとっては、小文字の方が普段から使い慣れているため。

 

■千反田が怒った理由 

 上記尾道の勘違いにより、A組の生徒は理不尽に罵声を浴びせられた。
そのことに千反田は怒ったのだ。

 

■タイトルの意味

 怒らない千反田が怒り、その理由を知りたがった。
怒ることは悪いことではないと言いつつも、本当は、いつだって怒りたくなんか
ないのではなかろうか。だから千反田は、尾道の間違いにも三分の理がある
と考えたがった。そして怒ったのは自分のミスだったと思いたいから、
自分の怒りの理由を知りたがったのではないか。
千反田えるとはそういうやつではないか?

事件の概要が分かった後で、折木は上記のように考察し、
そしてその後、それは七つの大罪の一つ「傲慢」を犯していると反省した。

 

◆「正体見たり」の謎・ネタバレ

■伊原と千反田が見た幽霊の正体とは?

「首吊りの影、あれな……。ハンガーにかかった浴衣、だったんだろうな」

by折木奉太郎。普段、物置として使われている本館の二階に干されていた浴衣。
何故真夜中なにそんなところに干されていたのか。
干されていたのは当然濡れたから。濡れたのは、それを着て夏祭りに出かけていた嘉代が

突然の雨に濡れたから。人が来ない場所に隠すように干されていたのは、
その浴衣が、姉・梨絵のものであり、濡らしてしまったことを
咎められるのを恐れていたからだった。

■タイトルの意味

 正体を見られるのは当然、幽霊。この場合の幽霊とは、折木の独白を引用すると、

俺には最初からわかっていた。千反田の言うきょうだいが、幽霊の類だと。
近寄れば枯れ尾花になってしまうと知っていたのに。

ということになる。きょうだいがおらず、またきょうだいがいて欲しかった千反田は、
きょうだいについて良いイメージを持っている(=幽霊)。
しかし、本短編の梨絵と嘉代のように必ずしもそうとは限らないということ。

 

◆「心あたりのある者は」の謎・ネタバレ

■放課後の校内放送の意味とは

 「十月三十一日、駅前の巧文堂で買い物をした心あたりのある者は、至急、
職員室柴崎のところまで来なさい」

十一月一日の放課後に放送された、上記校内放送から、折木は以下のように推論した。

放送は二回繰り返されるのが普通であるのに、一回だけで終わってしまったことから、
放送者は「慌てて」いて、しかも「緊急を要する」ものだった。
また、全生徒に聞かせることができない「放課後」に放送をしたのは、
呼び出す理由が「放課後」になってできたから。
「十月三十一日」は、作中時間で昨日であるにも関わらず、この言い方がされたのは、
放送で、用意された文章=対象生徒の謝罪文を読み上げたから。
その謝罪文とおそらくは当日の目撃証言を基に警察が神山高校へ来た。

「職員室柴崎のところまで来なさい」は、本来、生徒指導を行う生徒指導部ではなく、
教頭である柴崎のところに直接呼び出していることで、「事態が重大」であり、

「管理職レベルで情報が保秘」されていることを示す。
ここまでの情報から、対象生徒は何らかの犯罪にかかわっていると推測。

 さらに、上記推測プラス新聞紙上を賑わしている事件から、
十月三十一日に、巧文堂で神山高校の生徒が行った犯罪行為とは、
偽造一万円札を使ったと推測した。

 

■生徒Xは、偽造一万円札をどのようにして入手したのか?

 給料や、お小遣いではありえない。その場合、贋札をつかまされたら、
正当な権利として、交換を依頼できるはず。
ATMでもあり得ない。機械が引っかからないから。最高額紙幣であるため、お釣りも
あり得ない。また、罪悪感を認識しながらも使ったということで、
「不正な金」や自身が偽造した金ではない。
と言う条件から、先輩など目上の人間に貸した金が、贋札で返ってきたと推測した。

 

◆「あきましておめでとう」の謎・ネタバレ

■タイトルの意味

 閉じ込められていた納屋から、福部によって救出されたときの折木の言葉。
福部に対する、新年のあいさつと、鍵が開いてよかったを掛けている。

 

◆「手作りチョコレート事件」の謎・ネタバレ

■チョコを盗んだ犯人は誰だったのか?

 犯人候補は、天文部の面々&福部、千反田。
特別棟4階の地学講義室への侵入経路は2か所の階段しかなく、
一方はワックス塗りたてで通行止め、もう一方は、
工作部員がずっとポスターを貼っており、盗難可能な時間に通ったのは、
折木、福部、千反田の3人のみと証言。(天文部はそれ以前からずっと4階にいた)
まず、天文部が盗んだのだとすると、暖かい部室内でチョコが溶けて匂いがするはず。
千反田は被害者であるため除外すると、福部しか残らない。

 

■なぜ福部はチョコを盗んだのか?

 かつて、勝つことにこだわっていた福部は、あるとき、面白い勝ち方をしないと
面白くないことに気が付いた。それから、彼はこだわることをやめた。
それが現時点での福部の主義となっている。にもかかわらず、
伊原にだけは例外としてこだわっても良いものかどうか。それが、
彼の中で結論が出ていない。一方、伊原のチョコを受け取ることは、
伊原にこだわることを宣言することになる。だから、まだ受け取るわけにはいかない。
と言う状況で、受け取らない方法として、チョコをない物にする手段をとったのだ。

 

◆「遠まわりする雛」の謎・ネタバレ

■誰が、何故、中川工務店に連絡し、長久橋の工事を開始させてのか

 生き雛祭りを開催するために、市議会議員を経由してまで、工事の着工を遅らせた
はずだったが、何者かの連絡によって、工事が開始されていた。

 それは、「小成さんの息子さん」=「茶髪」が、狂い咲きしている桜と、
行き雛の組み合わせを写真に収めるために行ったこと。
彼が犯人だと考えた根拠は、千反田は、村井市議のメンツをつぶして平気な人が、
彼しか思い浮かばなかったから。折木は、「滅多に見られん行列」「わざわざ帰省してくる
価値がある光景」などという彼の発言から、通常の経路では通らない、狂い咲きの桜の
下を通るルートになることを初めから知っていたと推測した。

 

■何故、折木は十二単を着て歩く千反田を見たとき「しまった」と思ったのか

 推測だが、「やるべきことなら手短に」での屈託と似たような理由ではないか。 
つまり、灰色の学生生活が、千反田の存在によって、彩られることへの抵抗とも
言える感情ではないか。しかし、今回の場合は、あの時からさらに一歩踏み込んだ
感情だと思われる。

 自らの将来の話を語る千反田に対して、折木は次のように思った。

このとき、俺はかねて抱いていた疑問について、一つの答えを得た。
俺はこう言おうとしたのだ。「ところでお前が諦めて経営的戦略眼についてだが、
俺が修めるというのはどうだろう?」

  実際には口にされなかった言葉だが、これはもう愛の告白である。
つまり、一年かけて折木は千反田に惹かれてきていたが、十二単の千反田を見たことで、
いよいよポイント・オブ・ノーリターンを超えてしまったということではないだろうか。

<続編>

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