本作は「涼宮ハルヒ」シリーズの第4作目。
キョンとハルヒが高校1年生12月の出来事が描かれている。
調べたくなる言葉
◆オリオンの三連星
作中冒頭、クリスマスイブに予定があるかと団員に聞くハルヒの瞳には、
この星々のような輝きが浮かんでいるようにキョンは思った。
オリオン座の中央に並ぶ、δ星(ミンタカ)、ε星(アルニラム)、ζ星(アルニタク)
の三つの2等星を指す。
「オリオン座」『フリー百科事典ウィキペディア日本語版』
2019年7月25日 5:44 (UTC) URL : https://ja.wikipedia.org
◆世界一有名な猫のような笑い
キョンにイブの予定など無いと分かっていながら確認したときのハルヒの笑顔。
おそらく、ルイス・キャロルの児童文学「不思議の国のアリス」に登場する
常ににやにやと笑いを浮かべており、身体を自由に出現させたり消したりできる
チェシャ猫のことを言っているのではないかと思われる。
「チェシャ猫」『フリー百科事典ウィキペディア日本語版』
2019年7月19日 15:02 (UTC) URL : https://ja.wikipedia.org
◆夜更けすぎに雨が雪へと変わる
同じく本作冒頭で、みくるのクリスマスイブの予定を尋ねたハルヒが
「夜更けすぎに雨が雪へと変わる瞬間を見に行こうとかって誰かに誘われてない?」
などと聞いた。おそらくは、1983年に山下達郎が発表したクリスマスソング
「クリスマス・イブ」の歌詞「雨は夜更け過ぎに雪へと変わるだろう」を
下敷きにした発言と思われる。
◆ガリレイ
作中で、ちょっと早めのプレゼントがあるとみくるに話し、
本当かと聞かれたハルヒは「ガリレイのことは信じなくてもいいけど、
あたしの言うことは信じなさい」と返す。
ガリレオ・ガリレイは1564年イタリア・ピサ生まれの物理学者、天文学者。
特に天文学の分野で偉大な業績を残し「天文学の父」と称される。中でも
有名なのは、木星の4つの衛星を発見したこと、太陽の黒点を発見したこと、
金星の満ち欠けを発見したことと、それらの発見から導き出される結論として、
地動説を主張したことが挙げられる。彼は、地動説を主張したことで、
教会から異端審問に掛けられ有罪となっている。
◆マニ教とゾロアスター教
作中で、キリスト以外にも釈迦とマホメットの誕生日も祝わないと不公平と
主張するハルヒに対して、キョンはついでにマニ教とゾロアスター教の開祖の誕生日も
祝ってくれとぼやく。
マニ教は、ササン朝ペルシアのマニが3世紀に創始した宗教。ユダヤ教や、
ゾロアスター教、キリスト教などの教えを取り込んだ善悪二元論的な教えを持つ。
かつては、北アフリカから中国にかけてユーラシア大陸で広く信仰された世界宗教
だったが、現在ではほとんど信者はいない。
ゾロアスター教は、古代ペルシャ人が信仰していた多神教を教祖、
ゾロアスター(ツァラトゥストラ、ザラスシュトラ)が最高神アフラ・マズダのみ
の信仰に絞って成立。善悪二元論を主軸とした教え。ササン朝ペルシアでは、
国教とされた。また、火を崇めること、鳥葬・風葬が行われていることが特徴。
イスラム教の勃興で衰退したが、現在でもイランやインドに信者が残っている。
◆マシュマロマン
作中で、ハルヒが消えた世界で茫然とするキョンは、声をかけてきた
教科書を抱えたマシュマロマンみたいな生物教師の声を上の空で聞いていた。
マシュマロマンは、1984年のアメリカ映画「ゴーストバスターズ」
に登場する架空のマシュマロメーカーのマスコットキャラクター。
◆晩年のシッダルタ王子
作中で、とにかく不幸な人について語るキョンが「悟りの奥義を極めた
晩年のシッダルタ王子でさえ目を逸らしてしまうような本質的な不幸を
体現している人」と表現している。シッダルタ王子、つまりゴウタマ・シッダルタ
は、仏教の開祖、釈迦のことである。釈迦は35歳のときに悟りを開いた。
◆クジラ座α星の変光周期
作中で、作り替えられた世界の長門の落ち着かない精神状態を見たキョンが、
この星のように不規則なのか?と考える。クジラ座のο星、ミラは有名な変光星で、
変光周期331.65日の間に、見かけの等級から2.0等級から10.1等級まで変化する。
◆STCデータ
長門によって世界が作り替えられてしまったときに、「STCデータ」が
書き換えられたらしい。
STCとは、sensitivity time control=感度時間制御、感度時間調整の略称であり、
その意味は以下の通りだが、全くわからん。
対象とアンテナ間の距離の変化により生じる受信信号の時間的変化を
平滑化するために、受信機内部の利得を時間によって変化させること。
「一般財団法人 リモート・センシング技術センター」
https://www.restec.or.jp/glossary/stc 2019年9月3日22:07時点
◆紀伝体と編年体
作中で、キョンが長門のマンションの部屋に上がり込むのは、
紀伝体では四回目、編年体では二回目となるとキョンは考える。
どちらも歴史書の記述方法であり、紀伝体は、一人の個人や一つの国の
歴史について集中的に記述する方法であり、一方で、編年体は、
時系列順に全てのできごとを記述する方法のことを言う。
ストーリー上の謎・ネタバレ
◆12月18日の朝に何が起こったのか
長門が、ハルヒが持つ情報創造能力を簒奪し、キョンの記憶以外、
微妙に世界を造り変えた。結果、ハルヒはただのぶっ飛んだ女子高生となり、
古泉はただの転校生に、みくるはただの上級生に、そして、長門自身も
ただの文芸部員になった。
◆なぜ長門は世界を造り変えたのか
長門自身は「わたしのメモリ空間に蓄積されたエラーデータの集合が、
内包するバグのトリガーとなって異常動作を引き起こした」と説明し、
キョンは、感情こそがその「エラーデータ」だとした。つまり、
元々は感情を持っていなかったはずの長門が、SOS団での奇妙な日々を過ごすうち、
感情が芽生え、それが蓄積し「異常動作」を引き起こしてしまったのだ。
◆なぜキョンだけが造り変えられなかったのか
キョンに選択を委ねるため。つまり、造り変えた穏やかな世界が良いか、
それとも元のハルヒに振り回され、非常識な事件の数々に巻き込まれる騒がしい世界
が良いかをキョンに選ばせたのだ。結果、キョンは、非日常な学園生活を
楽しいと感じていたため、元の世界を選択したのだった。
<次回作>
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