「QED」シリーズの第7作。
1995年11月の出来事。
この年、桑原崇は28歳、棚旗奈々は26歳。
調べたくなる言葉
◆日本エアシステム
かつて日本に存在した航空会社。略称はJAS。2006年に日本航空(JAL)に
吸収されて消滅した。作中では、棚旗姉妹が高知へ向かう際に利用した航空会社。
◆桂浜
高知県高知市浦戸に位置する、太平洋に面した海岸。高知県を代表する名所の
一つで、作中にも登場したように坂本龍馬の銅像がある。作中では、
高知空港についた棚旗姉妹が真っ先に向かった場所。
「桂浜」『フリー百科事典ウィキペディア日本語版』
2019年3月27日 18:58 (UTC) URL : https://ja.wikipedia.org
◆龍馬記念館
正式には高知県立坂本龍馬記念館という、龍馬記念館は高知県高知市にある
博物館で、海援隊の規約やスミス&ウェッソンの拳銃、龍馬が様々な人に宛てた書簡
など、龍馬にまつわる品物が展示されている。桂浜のすぐ近くにあり、作中で
棚旗姉妹が桂浜から向かった先。
「高知県立坂本龍馬記念館」『フリー百科事典ウィキペディア日本語版』
2019年8月25日 1:23 (UTC) URL : https://ja.wikipedia.org
◆ブーレーズ・フェスティバル
1995年5月に東京で開催された音楽祭。ブーレーズは、1925年フランス生まれの
作曲家、指揮者のピエール・ブーレーズのこと。作曲家としての代表作は、
「ピアノ・ソナタ第一番」「レポン」「リチュエル」など。
指揮者としては、ロンドンのBBC交響楽団やニューヨーク・フィルなどで、
常任指揮者を務めた。彼はこのフェスティバルに来日し、
シカゴ交響楽団やNHK交響楽団などを指揮した。
作中では、外嶋がこの年はこのフェスが全てだったと語る。
◆司馬遼太郎
作中で、棚旗姉妹が龍馬記念館へ行ったときに龍馬の銅像に寄せる彼の
メッセージが六曲屏風に書かれていたと紹介されている。
1923年生まれの日本の小説家で、歴史小説を多く残している。龍馬に関する作品
としては「竜馬がゆく」がある。その他、新選組を描いた「燃えよ剣」、
日露戦争期の明治日本を描いた「坂の上の雲」などが代表作として知られる。
◆船中八策
坂本龍馬が1867年(慶応3年)に起案した新国家の基本方針。
土佐藩船・夕顔丸の船上で、後藤象二郎に伝えられた。その内容は以下の通り。
・大政奉還
・上下両院の設置による議会政治
・有能な人材の政治への登用
・不平等条約の改定
・憲法制定
・海軍力の増強
・御親兵の設置
・金銀の交換レートの変更「船中八策」『フリー百科事典ウィキペディア日本語版』
2019年8月10日 16:21 (UTC) URL : https://ja.wikipedia.org
◆龍河洞
高知県東部の香美市に存在する鍾乳洞で、岩手の龍泉洞、山口の秋芳洞と
共に日本三大鍾乳洞の一つとされる。作中では、奈々と分かれた沙織は、
この鍾乳洞の近くにある龍馬歴史館へ向かった。
◆フィルモア大統領
作中で、1853年に浦賀へやってきたペリーがこの大統領の親書を携えていたと
作中で紹介されている。ミラード・フィルモアは1800年生まれの
アメリカの政治家で、第12代副大統領及び第13代大統領を務めた人物。
前任者の急死により副大統領から昇格。国内ではインディアンに対して、
徹底排除の姿勢を取り、国外では日本との貿易を開始し、ハワイを併合しようとする
フランスのナポレオン三世と対立した。
◆スミス&ウェッソン
作中で、龍馬が高杉晋作から上海みやげにもらった拳銃、
スミス&ウェッソン・リボルバーが紹介されている。スミス&ウェッソンは、
1852年にホーレス・スミスとダニエル・ベアード・ウェッソンによって設立された
アメリカの銃器メーカー。現在はマサチューセッツ州スプリングフィールドに
本社を置く。
◆ウロボロス
朽木孝子の独白中に「この『全ての欲望を捨てたいという欲望』は、どうやって処理し
清算したら良いのだろう? これこそウロボロスだ」と言う文脈で登場する。
ウロボロスはアステカや古代中国、エジプトなど古代から各地で見られる紋章で、
己の尾を噛んで環となったヘビ(または竜)で表される。意味としては、
無限性、完全性、循環性、永続性などを表す。
「ウロボロス」『フリー百科事典ウィキペディア日本語版』
2019年8月22日 14:24 (UTC) URL : https://ja.wikipedia.org
◆ホームズの言う「あの夜の犬の不思議な行動」
作中で、孝明天皇が崩御された前後の医師の日記が残されていないことが、
本項と同じようにおかしいと桑原が語る。シャーロック・ホームズシリーズ
2番目の短編集「シャーロック・ホームズの思い出」に収録されている
「白銀号事件」に「あの夜の犬の不思議な行動」というホームズの台詞がある。
ストーリー上の謎、ネタバレ
◆蝶ヶ谷村で起こった事件の真相
朽木刻夫と遠敷巴、そして一昨年に鄙神祀男を殺したのは鄙神峰子。
(竜郎は刻夫ともみ合った際に頭を打った)
動機は、村の成り立ちと宗教にある。蝶ヶ谷村の人々は、平家の家紋を使っているが、
平家の落人ではなく、平家の落人を殺した人々であった。だからこそ、蝶ヶ谷神社で
祀られているのは強烈の荒ぶる神=怨霊であったのだ。桑原は平家の落人の村であれば、
子孫である自分たち自身が怨霊なのだから、祖先を祀るだけで良いはずなのに、
というところから気づいた。そして、村では、良くないことが続くと、
荒ぶる神を鎮めるために、生贄を捧げていた。生贄となるのは、その年の年男または
年女(この村の人々の名前には例外無く、干支が入っている)。生贄に選ばれた人は、
ドクニンジンを飲むことになっているが、古来からこの毒によって死んだ人は
永遠の不死の世界へ行けるとされていた。
村が無くなるという事態を迎えたこの年1995年亥年の生贄に選ばれたのは、
「亥」の文字を名前に持つ朽木刻夫であった。彼と付き合っていた峰子は、
永遠の世界へ行ける彼を嫉妬し殺したのだ。
◆鄙神峰子悲劇について
本作の犯人である彼女は2点の思い違いをしている。
一つ目は、父・祀男が村を売って金を手にしたと思っていたこと。実際には、その金は
独り占めするためではなく、村の人々のために使おうとしていたのだ。
二つ目は、95年に祀られるのは刻夫だと思っていたこと。理屈から言えば、
正しいのだが、刻夫は実は長老・鄙神演吉と朽木未来の子供であり、実子を
祀りたくなかった演吉は遠敷竜郎を祀ることにし、彼にイノシシの肉を食べさせ、
「血も肉も亥に」させたのだ。
◆竜馬暗殺の犯人
桑原は、実行犯は京都見廻組の今井信郎ら、黒幕は薩摩藩(西郷隆盛)だと
主張した。まず、実行犯を見廻組とした理由は、幕末から明治にかけて
今井が語った内容から。黒幕を薩摩とした理由は、元々龍馬は薩摩と同じく
武力討伐派だったにも関わらず、その後、公武合体派へと、薩摩からすると
「変節」したため。また、徳川家康の参謀、天海僧正が、明智光秀であったという
伝説を正とすると、明智の一族である坂本龍馬は、関ヶ原以来の薩摩の大敵であるとも
言え、それも理由の一つではないかと桑原は語る。
薩摩が黒幕と考えた根拠は、
海援隊士・佐々木多門が「薩摩之所置等、種々愉快之義之有」と記した手紙、
明治になってから西郷が今井の助命運動に積極的であったこと、
維新直後の今井の取り調べ結果が、特に土佐藩出身者に知らされていなかったこと、
そして、寺田屋事件で負った怪我が原因で、銃を上手く握れず、また、もしかしたら
刀も上手く扱えなかったという情報を知り得たのは、龍馬が療養で滞在した
薩摩の人間の可能性が一番高いことが挙げられている。
(上記情報があったからこそ、刺客は易々と現場へ踏み込めたし、易々と
討ち果たすことができたのだ)
<次回作>
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