「涼宮ハルヒの憤慨」の謎・ネタバレ

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本作は「涼宮ハルヒ」シリーズの第8作目。
キョンとハルヒが高校1年生3月の出来事が描かれている。

調べたくなる言葉

◆鯨のヒゲで作ったゼンマイ

 ヒゲクジラ類が摂食時にろ過に使われる部位。引張強度があり、
軽く、弾力性に富むなどの特徴があることから、金属やプラスチックが
開発されるまで様々な製品の素材に用いられた。
 作中で言及されるゼンマイもその一つであり、他には傘や扇子の骨、
ヴァイオリンの弓などに用いられた。


「鯨ひげ」『フリー百科事典ウィキペディア日本語版』
2020年2月13日 18:21(UTC)  URL : https://ja.wikipedia.org

 

◆三国志で言えば司馬懿

 鶴屋が生徒会長を表現した言葉。司馬懿は中国・三国時代の魏で曹操に仕えて
活躍した武将、政治家で字は仲達。蜀の諸葛亮と幾度も戦いを交えた。
後にクーデターを起こして魏の実権を握り、孫の司馬炎が西晋を建国した。

 

◆スツーカ爆撃機の編隊飛行音を聞いたパルチザン少年兵のような恐慌

 生徒会書記の名前が黄緑江美里であると聞き、彼女と長門がなにやら目配せ的なことを
した場面を見たキョンはこれに襲われた。
 スツーカ爆撃機は第二次世界大戦中にドイツが用いた急降下爆撃機のこと。安定した
急降下性能から生まれる精密な爆撃は、急降下時の風切り音、通称ジェリコのラッパと
ともに連合軍から恐れられた。(ジェリコのラッパとは旧約聖書のヨシュア記に見られる
エピソードで、指導者ヨシュアの命で人々が一斉にラッパを鳴らすと、ジェリコ=都市名の
城壁が崩れ落ちたとされる)
 パルチザンは非正規軍、いわゆる民兵を指し、この場合は、ナチスドイツ占領下の
ヨーロッパ各国で、ドイツに対する抵抗運動をしていた人々を指す。

 

◆まるでスティンガー対空ミサイルでジュピターゴーストを狙わせるような異例の事態

 ハルヒが団長から編集長にジョブチェンジして、SOS団のメンバーを即席作家に
任命して小説モドキを書かせるに至った事態を指してキョンはこのように表現した。
 スティンガー対空ミサイル、正式にはFIM-92 スティンガーは、アメリカの
ジェネラル・ダイナミクス社が開発し、1981年に米軍に採用された
携帯式防空ミサイルシステム。スティンガーは毒針を意味する。


「スティンガー」『フリー百科事典ウィキペディア日本語版』
2020年3月30日 6:20(UTC)  URL : https://ja.wikipedia.org

 

 一方、ジュピターゴーストは機動戦士ガンダムシリーズに登場する架空の兵器名。
ドム系のモビルスーツをコアに、惑星間クラスの超長距離侵攻を目的とした
モビルアーマー。ドム系を用いているように元々はジオンが構想したものだが、
後に、アナハイム・エレクトロニクス社がこのコンセプトに基づいて、
ガンダム試作三号機デンドロビウムを開発した。

 

◆本当なら三回訪れないと仲間になってくれない

 作中で朝比奈みくるが制作した小説で白雪姫が世捨て人となった軍師を
仲間にする際の記述。中国・三国時代の故事成語、三顧の礼がベースになっている
表現で、当時40代の劉備が20代でかつ、当時無名に近い諸葛亮を軍師に迎えるため、
三度で向いたという故事。

 

◆俺はチャレンジャー海淵に落ちていく沈没船程度に深く考え込んでいた

 授業中に、真面目に授業を受けているふりをしながらキョンはこの程度に
深く小説内容について考えていた。チャレンジャー海淵は、北太平洋のマリアナ諸島の
東に位置するマリアナ海溝の最深部。長さ11km、幅16km程度の三日月型をしており、
その深さは1万mを超え、海洋の最深部となっている。

 

◆ジャン・ジャック・ルソー

 ルソーは、阪中の家の飼い犬の名前。その犬のことをハルヒ(と阪中父)は
ジャン・ジャックと呼んでいたが、キョンが言う通り、フランスの哲学者の名前。
 ルソーは1712年ジュネーヴで生まれ、フランスで活躍した哲学者。彼はイギリスの
ジョン・ロックらと並び、社会契約説を提唱した。社会契約説とは、国家が正当化される
ためには、人間の自由な意思が社会契約の中で保障されている必要があるという説で、
カトリック教会や、王権神授説に基づく絶対王政下のフランス王家からの非難に
さらされたが、後のフランス革命へ大きな影響を与えた。
 主な著作に「人間不平等起源論」「エミール」「社会契約論」など。

 ちなみに、犬種のウエストハイランドホワイトテリアは、白一色の被毛を持つ
スコットランド原産の小型テリア。

West Highland White Terrier Krakow.jpg
「ウエストハイランドホワイトテリア」『フリー百科事典ウィキペディア日本語版』
2019年12月28日 15:43(UTC)  URL : https://ja.wikipedia.org

 

◆十九世紀半ばのヨーロッパを徘徊する共産主義

 ワンダリング・シャドウで犬猫が立ち入りを拒否する地域があることに対して、
キョンは標題のような姿のない妖怪を幻視して体が冷えたと語る。
 標題は、カール・マルクスとフリードリヒ・エンゲルスにより1848年に書かれた
書籍「共産党宣言」の書き出し部分、すなはち「
一匹の亡霊がヨーロッパを徘徊している、
共産主義という亡霊が。およそ古いヨーロッパのすべての権力が、
この妖怪を祓い清めるという神聖な目的のために、同盟を結んでいる」を
下敷きにしていると思われる。

 

◆SETIでもやってるサイクロプス計画の立案者

 長門から、「珪素を主幹とした構造体の中に意識を内包するものなら存在する」
と言われたキョンは、標題の人へ教えたら小躍りするだろうと考えた。
 まず、SETIはSearch for extraterrestrial intelligenceの略で、日本語では
地球外知的生命探査と訳される。地球外の知的生命による宇宙文明を発見しようとする
プロジェクト全般を指す。サイクロプス計画は、SETIを目的としたプロジェクトの
一つで、直径100mのアンテナを1000個以上並べて設置し、地球外からやってくる
電波信号を捕えようとする計画。

 

ストーリー上の謎、ネタバレ

◆「編集長★一直線!」でのキョンの作品におけるミヨキチの正体とヒントについて

 キョンがデートをした相手、ミヨキチは本名吉村美代子はキョン妹の同級生であり、
小学四年生。つまり、作品上はキョンが中学三年生のときの話とされており、
その時の恋愛の話を書いたもの、のように見えるがそうではなかったという作品。
 そのことに古泉は手がかりとなる※1~5の印をつけた上で、「どんな鈍い読者でも
※4くらいでピンと来ますよ」と語っている。

 ※1はミヨキチ「明日、お暇ですか? 明後日でもいいんです。でも四月に
入ってしまったらダメなんです。あなたのお時間をお借りできないでしょうか」
キョン「ええと、俺に訊いてんの?」に付けられているが、妹の友達であるミヨキチが
予定を聴くべき相手は当然妹であるため、このように答えたのだと思われる。

 ※2は「俺は妹の行く末を案じつつ、ミヨキチの落ち着いた声を思い出していた」
に付けられている。同い年のミヨキチと違って幼い妹の行く末を案じる場面だが、
これがキョンと年が近い恋人だとしたら、この表現はおかしい。

 ※3は「女と二人で会っているところを誰かに見られたら面倒だなと考えた
わけでもない。んなこと、思いつきもしなかったね」に付けられている。
ここも、仮に年が近い女性とデートしているところを例えば同じクラスの人に
見られたら面倒だとなるところがそうではない、というところがヒントになっている。

 ※4は「この春からどこの学校に行くのかとか、俺の妹の話とかをした覚えがある」
に付けられている。恋人と妹の話はなかなかしないとかもしれないが、
妹の同級生とならごく自然である。

 ※5は、「その緊張は、劇場に到着してチケット売り場を前にするまで続いた」に
付けられている。キョンとミヨキチはPG-12の映画を観ようとしており、
ミヨキチは10歳のため、本来は観ることができない。そのため、12歳未満であることが
ばれないかどうかを恐れて緊張していたと考えられる。

 

◆「ワンダリングシャドウ」にてルソー他ペットの病気の原因は何か

 正体は「珪素構造生命体共生型情報生命素子」という、統合思念体を
人間に置き換えた場合に「ウイルス」と表現される存在。この存在が
犬の散歩道付近に固着しており、彼らのネットワーク構造と犬類の脳内神経回路が
類似していたため、乗り移り、それによって犬たちは衰弱することになった。
 長門はこの「病」の治療のために、(監視がしやすい)シャミセンを依り代として
この生命素子を移動させた。

 

<次回作>

 

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