「QED 式の密室」の謎・ネタバレ

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「QED」シリーズの第5作。
1995年1月の出来事。
この年、桑原崇は28歳、棚旗奈々は26歳。

調べたくなる言葉

◆イエロー・シャルトリューズ

 フランスのシャルトルーズ修道会で製造されているリキュールで
「リキュールの女王」とも称される。詳細は「QED 百人一首の呪」の記事参照。
 本作は章が全てリキュール名またはカクテルの名前となっている。
イエロー・シャルトリューズは第一章のタイトル。

 

◆ミモザ

 本作冒頭の場面で、カル・デ・サックにて奈々が飲んでいたカクテル。
曰く、「世界で一番豪華なオレンジジュース」。詳しくは、
「QED 百人一首の呪」の記事参照。

 

◆三芳野神社

 埼玉県川越市にある神社で807年の創建で、祭神は素戔嗚尊と奇稲田姫命。
作中にあるように、太田道灌が築城した川越城内にあるため

普段は参拝できなかった。年に一度の大祭で参拝できるときも、
厳重な警備の中、立ち止まることも許されなかった。特に帰り道では、
持ち物をすべてチェックされたとされる。
 そのことが、童謡「通りゃんせ」で「行きはよいよい 帰りはこわい」
という歌詞に繋がっている。

 

◆太田道真、道灌

 太田道真は室町時代中期から戦国時代初期に活躍した武将で扇谷上杉家の家宰。
文武に優れた人物
として知られる。その子の道灌と共に、河越城、江戸城など
を築城した。両城は、室町時代末期の1455年に発生した享徳の乱に際して、
公方との戦いに備えて築城された。享徳の乱は、足利氏が代々務める
鎌倉公方(室町幕府が関東10国を統治するために置いた鎌倉府の長官)と
それを補佐する立場にあり、山内上杉氏が代々務めた関東管領の間で、
発生した争い。道灌はこの乱で活躍しすぎたために、暗殺されてしまっている。

 

◆レッド・アイ

 第2章のタイトル。ピルスナースタイルのビールに、トマトジュースを加え、
マドラー代わりにセロリを加えて作られるカクテル。名前の由来には諸説あるが、
そのうちの一つを紹介すると、二日酔いで目が真っ赤になっていた人が好んで
飲んでいたからというもの。

 

◆三渓園

 神奈川県横浜市中区にある庭園で、1906年に実業家、茶人の原富太郎
(富岡製糸場や横浜銀行の経営に携わった)が造園。17.5haの敷地に
17棟の日本建築が配置されている。その中には、臨春閣(旧紀州藩別邸)、
春草蘆(織田有楽斎の建築とされる茶室)などの重要文化財が含まれている。
 作中では、弓削清隆が殺されたとされる時間に、妻の暢子が友人の桜井泰子
と電話で話していた話題の一つがここで開かれるお茶会の話題だった。

 

◆金神信仰

 金神とは九星術で生じた神、方位神の一つとされ、この神が在る方位は
あらゆることが凶とされた。その方位を犯すと、家族七人、いない場合は近所の人間
が殺されるとされ非常に恐れられた。そのことから、逆にそれだけの力を持っている金神
を信仰すれば御利益があるという考えが金神信仰である。

 

◆アルマイト

 アルミニウムの表面に、陽極酸化被膜を作る処理を指す。耐食性、耐摩耗性、
装飾性の向上などが目的。1929年に日本の理化学研究所の研究員によって発明された。
アルマイトはその際の登録商標名。作中では、黒澤警部が時枝に事件のことを
聴取した際に、黒澤が煙草をアルマイトの灰皿に押し付けて消す描写がある。

 

◆昭和三十一年のプロ野球日本選手権

 読売ジャイアンツと西鉄ライオンズの間で争われた。作中で巨人ファンと
思われる岩築虎蔵巡査部長は「打つ方は二千本安打の川上。投げる方は、堀内に、
別所ですから。四ー〇でいただきです」と大声で言い、
 一方、西鉄ファンと思われる黒澤警部は「豊田、中西、大下のダイナマイト打線を
忘れたのか? そしてピッチャーは稲尾だ! チンピラが勝てる相手じゃない!」
と叫ぶ場面が登場する。
 結果は、4勝2敗で西鉄ライオンズが制し、最優秀選手に豊田が、
敢闘賞に稲尾が選ばれている。

 

◆ホワイト・レディ

 第3章のタイトル。詳細は「QED ベイカー街の問題」の記事参照。

 

◆伯道上人

 作中で、安倍晴明はこの人物に会うために唐に渡ったと紹介されている。
陰陽の本場、中国・城刑山にて、晴明に陰陽道を教えたとされ、
作中でも登場する「簠簋内伝金烏玉兎集」は伯道上人の教えが元になっていると
される説もある。

 

◆いざなぎ流、飯綱信仰

 いざなぎ流は土佐国物部村(現在の高知県香美市)に伝承されている独自の
陰陽道、民間信仰で、インドのいざなぎ王から伝授された24種の法術に基づくとされる。
祭儀は非世襲の太夫という神職によって執り行われる。
 飯綱信仰は、長野県の飯綱山に対する山岳信仰が発祥と考えられる
神仏習合の信仰である。飯綱は、白狐に乗った剣と索を持った烏天狗の姿で
表現されることが多いが、作中で紹介されている「管狐」、つまり、竹筒に入って
しまう程の狐としても表され、飯綱使いという人々によって使役され、
予言や、占術を成す他、使い手の敵に対して病気にされるなどの力を持つ。
 作中では、陰陽師たちがが使役する十二月将=十二神将が、ほかの信仰で
どういった名で呼ばれているかを桑原が紹介する下りで登場する。

 

◆宇治拾遺物語、今昔物語、大鏡

 作中で、安倍晴明についての記述がある作品として桑原によって紹介。
「宇治拾遺物語」は、13世紀前半に成立した説話物語集で、日本、インド、中国の
「あはれ」な話、「をかし」な話、「恐ろしき」話など多彩な説話が収録されている。
 「今昔物語」は、12世紀前半ごろに成立したとされる説話集で、インド(天竺)、
中国(震旦)、日本(本朝)の3部で構成される。全て「今は昔」から始まる。
 「大鏡」は、11世紀後半に成立した歴史書で、紀伝体(天皇に関した出来事を
年代順に記す書き方)で、文徳天皇から後一条天皇まで14代176年間の
宮中の出来事が記されている。200歳近い老人二人の語り合いを若侍が聴くという
スタイルを取っている。

 

◆藤原顕光

 蘆屋道満がこの人物の依頼で時の権力者、藤原道長を呪詛したエピソードが
作中で紹介されている。藤原顕光は、道長の従兄弟であり、晩年は官位も従一位左大臣
まで昇ったが、無能者として知られ、小右記では「出仕以来、万人に嘲笑され通しだ」
などと書かれてしまっている。ライバルの道長を恨んで亡くなり、悪霊となったとされ
悪霊左府と呼ばれている。

 

◆一条戻橋

 794年の平安京造営以来、一条大路の堀川を渡る場所に掛けられている橋。
安倍晴明はこの橋のたもとに式神を隠していた。

 

◆ブラック・ヴェルヴェット

 第4章のタイトル。詳細は「QED ベイカー街の問題」の記事参照。

 

◆ブルー・ムーン

 第5章のタイトル。詳細は「QED 東照宮の怨」の記事参照。

 

ストーリー上の謎、ネタバレ

◆基本情報

 カル・デ・サックにて、桑原と小松崎が奈々に弓削家で起こった事件について
語っているのは平成7年(1995年)の正月。
 明邦大学の食堂で、桑原と小松崎、そして弓削和哉が30年前の事件について
語っているのが、昭和61年(1986年)4月。
 そして、弓削家で事件が起こったのは昭和31年(1956年)のこと。

◆事件の真相について

 昭和31年に弓削家で起こった弓削清隆殺人事件の犯人は、執事の片桐。
清隆殺害時、密室とされた部屋には清隆と住み込みのお手伝い、小西時枝がいた。
清隆に襲われた時枝は清隆を突き飛ばす。その際、彼は後頭部を打ち、大きな
うめき声をあげてしまう。その声を聴いた暢子が書斎にやってくる音をきいた時枝は、
書斎に鍵をかける。=密室の完成
 その後、時枝は鍵を開けて外に出るとそこには暢子がいたが、暢子の目には、
穢れた存在である時枝と清隆の姿は映らなかった。片桐は状況を察し、
清隆の喉に短剣を突きつけて殺害した。

 

◆安倍晴明と鬼、式神について

 安倍晴明の母は信太森の狐(葛葉姫)だと言われている。その本当の意味は、以下。
信太森=小竹田=笹=ササ=砂鉄を意味し、信太森にある神社は聖神社であり、
その祭神はひじりの神=素戔嗚尊の孫=朱砂王である。
 また、葛葉は朝廷が敵を打った際に逃げた人々の「褌より屎ちし所を屎褌と曰ふ。
今、樟葉といふは訛れるなり」また、「樟葉というのは、現在の大阪府枚方市楠葉」。
 さらに狐=鬼衆根=夜の人、夜者=黄泉の国の存在であり、また、狐=来つ寝=遊女
でもあり、上記をまとめると、晴明の母は、製鉄=タタラに関係があった人物であり、
朝廷に追われたために、遊女に身分を落とした人物であるということが分かる。

 また、鬼とは朝廷に反抗的な人々を指し、朝廷は彼らと庶民の接触を断つべく、
「鬼に触られた者は鬼になってしまう」という騙りを人々に喧伝した。それはつまり、
「鬼と接触した者は鬼と同様と見做す」ということであった。
 式神は、「使鬼」であり「死鬼」=鬼である。この式神=鬼が、人々の目には見えない
のに晴明の目には見えた理由は官位である。ここでいう人々とは昇殿を許されている
四位以上の官位を持つ貴族のことであり、五位未満は「人」ではなかった。つまり、
四位以上の人々からすると、五位未満の人々がいても、そこに「人」の姿を認める
ことはない=見えない、ということを意味している。晴明のエピソードで
それを説明すると、晴明の家では人がいないのに蔀が上げ下げされるというのは、
晴明の家ではそういった身分の人々を使っていたという意味であり、
式神を使って蛙をぺしゃんこに潰した話では、蛙=カワズ=川衆=川辺に住む人々
を貴族の目の前で殺したということである。

 

<次回作>

 

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